ガートナーは、デジタルビジネスの実現に必須のデータとアナリティクスを推進するために重視すべき12の役割を発表した。デジタルビジネスの実現には、データとアナリティクスを中核に据えたデジタルプラットフォームのサポートが不可欠であり、最新技術の利用方法に加え、データとアナリティクスの活用に必要な役割/スキル/組織文化を編成して変革を推進するかにあると解説する。
同社が2019年9~11月に実施した「第5回最高データ責任者 (CDO) サーベイ」では下図の結果が判明し、データやアナリティクスの成功を阻む障壁の上位4つは、いずれも人的要素(組織文化、リソース、データリテラシー、スキル/スタッフ)に関係すると指摘した。

出典:ガートナー報道発表資料(2020年9月)
一方で同年実施した「CEO(最高経営責任者)/上級経営陣向けサーベイ」では、「育成または改善が最も必要な組織的能力」として「タレントマネジメント」「テクノロジマネジメント」「データ中心主義」が上位3つであり、CEOは企業全体のデータリテラシーの向上に注力していることが分かるという。これら調査を踏まえ同社は以下の12の役割を取り上げ、必要性などを今すぐ検討すべきと提言しています。
サポートに関する役割
1.CDO(最高データ責任者):組織を代表して、データの品質、信頼性、アクセスを向上させ、組織のデータ資産と外部のデータエコシステムから価値を生み出す責任を担う上級経営幹部。データを活用することで価値をもたらし、アナリティクスと企業情報ポリシーによってあらゆる形態のビジネス成果を実現する。
2.データ/アナリティクスマネージャー:データとアナリティクスのセンターオブエクセレンス(COE)を管理する責任を担う。データとアナリティクスのデリバリーを組織横断的にサポートするほか、ビジネス目標に対するデータ/アナリティクスの貢献度を監視し、追跡する責任も担う。
3.情報アーキテクト/データアーキテクト:ビジネス情報の影響力を高める役割を担う。情報資産によってどのようなビジネス成果が得られるかを見極め、定義し、分析することで、全社で共有すべきビジネス情報の一貫性を保ちながら提言を示す。
4.アナリスト:領域の専門家として、または領域の専門家と密接に連携して、ビジネスの現状をデータに基づき分析する。データとアナリティクスのユースケースにより、さまざまなタイプのアナリストが、企業内のあらゆる組織に存在し得る。
5.プロジェクトマネージャー:ポートフォリオ内の全てのプロジェクトを成功させる責任を担う。ビジネス上の優先課題に合わせて、期限内、予算内、範囲内で全てのプロジェクトの計画、実施、デリバリーを行う。
6.チェンジマネージャー:組織的成果とビジネス成果を確実に達成する戦略を策定し、その戦略において、データとアナリティクスを用いた新しい仕事の進め方を従業員に促す。
データに関する役割
7.データエンジニア:さまざまなデータ利用者が適切なデータにアクセスして利用できるように支援する。主にデータとアナリティクスの主要なユースケースをサポートするデータパイプラインの構築、管理、運用に責任を負うほか、データガバナンスとデータセキュリティの要件への準拠も請け負う。
8.リード情報スチュワード:組織全体に散在する情報スチュワードが一貫性を保ち、目的を遂行できるようにするために、情報スチュワードの活動の方法や、その内容を同僚や情報ガバナンス委員会に報告する際の基準を確立する。
9.MDM(マスターデータ管理)マネージャー:組織やビジネスに関して、MDMプログラムに影響を及ぼすような方針変更があった場合、中央チームによって、あるいはビジネス部門/機能領域/地域内で、評価および対処されるよう取り組む。また、IT部門と連携して、アーキテクチャー、データモデリング、統合、アプリケーション開発、データ品質テクノロジー、システム管理、セキュリティ、レポート作成に取り組む。
アナリティクスに関する役割
10.アナリティクスとビジネスインテリジェンス(BI)の開発者:レポート/ダッシュボード/インタラクティブビジュアライゼーションを開発し、データウェアハウス/データ統合/データモデリングを利用してビジネス上の意思決定をサポートする。アナリティクス/BI機能の構築に加え、高品質のアナリティクスソリューションとBIレポートの配信およびデリバリーを確実に実施する役割を担う。
11.データサイエンティスト:定量分析(統計学、アルゴリズム、マイニング)や可視化の手法を用いて、複雑なビジネス問題をモデリングし、ビジネスに関する洞察を見いだす責任を担う。
12.AI/ML開発者:機械学習(ML)や各種の人工知能(AI:自然言語処理、画像認識、最適化など)機能を用いて、アプリケーションを全般的に改良する責任を担う。AI/ML開発者には、AIモデルの組み込み、統合、デプロイを行えることが求められるが、AIモデルの構築では専門家の助けを得る。