Microsoftはここ数年、ナレッジマネジメント(知識管理)サービスの提供に取り組んできた。2019年の「Ignite」カンファレンスでは、「Project Cortex」というコード名で最初のサービスを提供する計画が発表され、2020年のIgniteカンファレンスではCortexの刷新と初のCortexコンポーネントのリリース計画が発表された。
今週まで、Project Cortexは「Outlook」や「SharePoint」といった既存のMicrosoftアプリケーションからアクセスできる単独の集約されたサービスになると考えられていた。Microsoftの担当者はCortexを「2017年に発表された『Microsoft Teams』以来の新しい本格的な『Microsoft 365』サービス」と呼び、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が発生するまでは、2020年初夏にリリースする計画だった。しかし、Cortexのプライベートプレビューに参加した顧客からのフィードバックに基づき、Cortexは単独の統合サービスとして1度にリリースするのではなく、ユーザーベースのアドオンとして順次展開することになったようだ。
Microsoft 365担当ゼネラルマネージャーのSeth Patton氏によれば、プライベートプレビューに参加した数十人の顧客は、この製品を「ナレッジを理解し、その活用方法を考えるための複数年に及ぶプロセスだと理解している」。Cortexは「さまざまな用途の広範なシナリオ」に対応するが、その本質は「日常的に使用するアプリケーションを通じてナレッジを提供する」ことにあるという。
Project Cortexから登場する初の製品は「SharePoint Syntex」と名付けられた。SharePoint Syntexは、人工知能(AI)を使ってコンテンツを理解し、自動処理するもので、機械教示(machine teaching)技術を使って経費報告書や請求書、契約書等、多様なコンテンツのソート、タグ付け、ルーティング、保管を行う。
SharePoint Syntexは米国時間10月1日から、すべてのMicrosoft 365コマーシャルプランのアドオンとして提供される。筆者がMicosoftに問い合わせたところ、広報担当者はユーザーベースのアドオンとなることを強調した上で、「自分が保管しているモデルやドキュメントと合わせて、コンテンツセンターにアクセスする必要のある人がユーザーと見なされる。すべてのユーザーにライセンスが必要となる」と述べた。
「Project Cortex」からは、2020年内にさらなるコンポーネントがリリースされる予定だ。トピックの整理などMicrosoft 365でのナレッジの提供に関するものとなる予定だが、具体的な名称やライセンスの形式については回答を得られなかった。
SharePoint SyntexはAzureの「AI Builder」と「Azure Cognitive Services」の「Language Understanding」モデルを利用している。また、「Microsoft Search」「Power Platform」などのサービスと連携される予定だ。SharePointのコンテンツサービスをベースとする「コンテンツセンター」と呼ばれるカスタマイズ可能なSharePointサイトが用意され、ドキュメントの理解と分析を行う。担当者によれば、ユーザーはたった5つのコンテンツでモデルのトレーニングを実行できる。将来的にはさまざまなパートナーと連携して、コネクター経由で多くのコンテンツソースを追加することにより、CRMシステム等のアプリケーションとも統合できるようになるという。
今週開催されているIgniteでは、Microsoft Searchについても複数の発表が行われた。
Microsoft Searchは2年ほど前に発表されたMicrosoftのイントラネットなど向け統合検索サービスだ。MicrosoftはMicrosoft SearchをTeamsと統合し、ユーザーが特定のチャットやチャネルから人やファイル、会議、メッセージに関する情報を検索できるようにしている。近くWindowsのデスクトップ検索とも統合する予定だ。これは同社が(Office、SharePoint、Bing、Edge、Windowsとの一貫性を保つために)当初から計画していたものだ。
Project Cortexと関連する可能性のある機能拡張としては、「人工知能(AI)を利用してユーザープロファイルを強化し、スキルやプロジェクトに関する情報を追加」できるようになるほか、画像検索を強化し、ユーザーが組織内から写真やロゴ等の画像を検索できるようになる予定だとMicrosoftは説明した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。