顧客情報管理システム(CRM)導入成功のカギは、営業部門が日々の業務で活用することだ。多額の費用をかけて導入したものの、営業担当者やカスタマーサポートにとって使いにくければ、営業活動の効率化は難しい。
そんな課題を見事に克服し、マネージャー職のCRM活用率を劇的に向上させたのが、創業80周年を迎えるサトー(目黒区)だ。Salesforceを活用するユーザー企業が自社の事例をプレゼンし、日本一を決める「SFUG(Salesforce User Group) CUP」の決勝で「Sales Cloudを活用することで、行動が変わり、意識が変わり、成果が変わった」と語る同社。その取組みは、奇をてらわない実直なものだった。
現場の意見を聞かないから…で大炎上
1940年創業のサトーは、自動認識技術を活かしたプリンタ、ラベル貼付機などを扱うグローバル企業である。欧州や北米、東南アジアでもビジネスを展開しており、顧客は製造、物流、アパレル、小売り、病院など幅広い。
サトーが「Salesforce Sales Cloud」を導入したのは2017年8月。現在は営業、サービスを中心に、全国でSales Cloudを1220ライセンス導入している。マーケティング推進部の原田隆洋氏は、「活用ポリシーとして、『標準機能を使い倒すこと』『開発は(標準機能では)どうしてもできないときだけにすること』を掲げた」と説明する。工夫をすればSales Cloudの標準機能でも大抵のことはできるというのが、サトーの方針だ。
Sales Cloud導入以前、サトーではさまざまな課題を抱えていた。具体的には、属人的な営業体制が限界に達しており、戦略や施策でもPDCAサイクルをきちんと回せる状態ではなかった。また、こうした状況に対する危機感も、経営層と現場には大きなギャップがあったという。
サトー マーケティング推進部 原田氏
これらの課題を解決すべく、サトーではSales Cloudを導入した。同社内にはCRMの専門家がいなかったので、導入準備はセールスフォースが提供するトレーニングサービスを活用し、要件定義や構築などを行った。構築に要した期間は4カ月で、2017年8月にSales Cloudをリリース。
しかし、現場からは「前のシステムがよかった」「以前の○○がないと使い物にならない」「よくわからない」という不満の声が噴出し、大炎上してしまった。原田氏は「従業員からは『現場の意見を聞かないからこうなるんだ』と言われ、これでは使ってもらえないと痛感した」と語る。
可視化、情報共有、Pardot--活用のための「3本柱」
大炎上の反省から原田氏は、Sales Cloudを現場で活用してもらうための「3本柱」を決めた。それが「可視化」「情報共有」「Pardot(マーケティング自動化ツール)の活用」である。
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