可視化で最初に行ったのは、ダッシュボードの作成だ。セールスフォースが無料で開催している「ダッシュボードワークショップ」を社内で4回開催し、セールスフォースのスタッフを招いて機能やその使い方を説明してもらった。
ダッシュボードは「拠点別」「市場別」「製品別」をそれぞれ作成し、すべてのダッシュボードをホーム(トップ画面)に集約した。「どこに、どのような情報があるのか」をすぐに探せるようにするためだ。
一方、情報共有では社内共有SNSツールの「Chatter」を活用し、だれもが書き込みやすい環境にするよう心がけた。実は、サトーでは過去に3回ほど社内SNSの立ち上げに失敗している。その理由は、従業員が投稿しないからだ。原田氏は同じ轍を踏むまいと、やる気のある社員を巻き込んでChatterグループを作成。部門のアイコンを定期的に変更するなどして話題を作り、所属部員の発言を(半ば強制的に)促した。
この取り組みは功を奏し、さまざまなChatterグループが誕生した。しかし、ここで新たな課題も浮き彫りになった。それは、新人が気軽に書き込みにくくなったことだ。この課題を回避するために原田氏は、新人に必要なChatterグループを「お役立ちChatter」として1画面に集約。ちなみにこの画面作成では、標準で利用できる「アイコンメニュー作成」を活用した。
さらに、マーケティング自動化ツールのPardotの活用では、サードパーティ製の企業データベースと連携させた。その結果、2年間でホットリードが270%増、ホットリード獲得コストは60%削減できたという。
「利用」はするが「活用」はしていない
Sales Cloudの導入は一定の効果を上げた。しかし、原田氏は「根本的な課題解決にはなっていなかった」と語る。それは、活用しているのが特定のユーザーだけであることが判明したからだ。全マネージャーにヒアリングしたところ、活用率は18%程度だったのだ。
「つまり、(数字を確認するなど)会議のためには“利用”していたが、日々の営業管理には“活用”していなかった。結局、これまでやってきたことをSales Cloudでやっていただけで、マインドも行動も変化していなかった」(原田氏)
こうした状況を根本から改善するため、原田氏が取り組んだのが営業マネージャーとの一対一の会合だ。ダッシュボードの良さを伝えると同時に、現場の課題に耳を傾けた。その結果、多くのマネージャーがCRMに対する苦手意識を持っていたことが明らかになったという。
そこで原田氏は「そもそもCRMで何ができるのか」を中心に、各マネージャーが抱えている課題を解決する形でその機能や使い方を説明した。例えば、「非営業部門の貢献度を可視化したい」という要求には、商談オブジェクト項目に手伝った人の名前を入れて貢献度合いを数値で可視化した。その結果、営業部以外でもCRMを活用したいとの要望があがったという。
また、セールスフォース内で成功例を共有する会「Sharing Success」を参考にフォーマット化し、四半期に一度、拠点のナンバーワン事例を共有した。原田氏は「30以上の改善を、標準機能だけで実現した」と説明する。
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こうしたことを地道に繰り返していった結果、自発的にオリジナルダッシュボードを作成するマネージャーも増加していった。現在では、マネージャーの利用率が85%に上昇しただけでなく、年間の業務工数削減時間が約2万時間、ホットリード数の創出が270%、名刺登録数は19万6000にも達するという成果をあげているとのことだ。