日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)は9月24日、コロナ禍に伴うテレワークでのセキュリティ実態などを緊急調査した結果を発表した。
両者は毎年1月に「企業IT利活用動向調査」を実施している。今回の調査は、コロナ禍が企業の考え方や行動にもたらす変化を把握する目的で7月16~20日に緊急で実施され、企業IT利活用動向調査での対象企業のうち727社のIT/情報セキュリティ責任者が回答している。
まず、4月に政府が発令した緊急事態宣言下において業務を円滑に遂行するために重視した項目では、49.1%が「テレワーク環境におけるセキュリティ対策」、41.0%が「仕事環境の整備」を挙げた。多くの企業がテレワーク対応を余儀なくされ、仕事環境の整備と併せてテレワーク環境でのセキュリティインシデントの防止を図る動きが見られたとする。
緊急事態宣言下において業務の円滑な遂行のために重視した点(出典:JIPDEC/ITR)
また、コロナ禍で働き方改革の取り組みを加速させた企業も多いことが分かった。1月に実施した企業IT利活用動向調査の結果と、7月の緊急調査の結果を比べると、「テレワーク(モバイルワーク)制度の整備」をした企業が14.8ポイント、「在宅勤務制度の整備」は14.1ポイント増加した。
働き方改革の取り組み状況の変化(出典:JIPDEC/ITR)
セキュリティ対策状況の変化についても、特に「在宅勤務、テレワーク用のセキュリティ規程の整備と教育」を実施した企業が12.9ポイント、「法人向けのコミュニケーションツール(Web会議/チャット/メッセンジャー)の利用」が8.1ポイント、「リモートデスクトップ/アプリケーション分離/メール分離など端末にデータを残さない環境の整備」が4.2ポイント増加している。
働き方改革の実現に向けて実施しているセキュリティ対策(出典:JIPDEC/ITR)
コロナ禍によって取引先を選定する際にプライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得の状況を重視するようになった企業は6割前後(「以前より重視」と「重視するように変わった」の合計)に上った。
コロナ禍における取引先選定時の認証取得の重視状況(出典:JIPDEC/ITR)
テレワーク阻害要因の1つとして注目された契約については、コロナ禍で電子契約の導入を検討する企業が増え、1月時点の27.5%から7月には35.6%に拡大している。電子化したい業務プロセスには、社内決裁処理、契約書の締結・保管などが挙げられていた。
電子契約の採用状況の変化(出典:JIPDEC/ITR)
調査結果についてITR コンサルティング・フェローの藤俊満氏は、「コロナ禍による企業活動への影響が顕著に表れた。数年前から働き方改革が一部企業で進んでいたが、コロナ禍で急速に進展したといえる。収束した後も、企業は全く元の環境に戻るということはなく、新しい仕事環境に合わせシステム化が進んでいくだろう」と分析している。