NTTが上場子会社のNTTドコモを完全子会社にすると発表した。NTTグループ再編の「本丸」を突き動かすものは何か。両社の記者会見から筆者なりに考察したい。
目的は「ドコモの競争力強化とNTTグループ全体の成長」
NTTは4兆3000億円をかけてドコモ株式の公開買い付け(TOB)を行う。まずはその巨額ぶりが目を引くが、NTTはなぜこれだけの費用をかけてまでドコモを完全子会社にするのか。
両社が9月29日にオンライン形式で開いた記者会見では、NTT代表取締役社長の澤田純氏とNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏が、今回の取り組みについて説明した。その概要については関連記事をご覧いただくとして、ここでは今回の取り組みの目的と「なぜ今なのか」についてだけ、両者の話を取り上げておきたい(写真1)。
NTT代表取締役社長の澤田純氏(左)とNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏(記者会見を放映したYouTubeより)
澤田氏によると、NTTグループを取り巻く市場環境の変化に対応するため、グループ横断でのアセットやリソースの戦略的活用と意思決定の迅速化が不可欠なことから、このたびドコモを完全子会社にすることを決定したという。
その目的は、ドコモの競争力強化と、それを原動力としてNTTグループ全体を成長させることにある。澤田氏はドコモについて、「NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアなどの能力を活用し、新たなソリューションおよび『6G』を見据えた通信基盤整備を移動・固定の融合型で推進し、上位レイヤービジネスまで含めた総合ICT企業へと進化させたい」と意欲を示した。
また、吉澤氏は完全子会社化によって実現することとして、「今回の完全子会社化によってドコモはNTTグループの中核を担い、『全てのお客さまのフロント』としてトータルサービスを提供する存在となる。また、モバイルネットワークだけでなく、アプリケーションやサービスなどのソリューションまで含めて、お客さまのニーズにトータルで応えることができる会社に変革していく」と力を込めた。