Salesforceのメリットとして多く聞かれるのが、「システム管理の経験がなくても使いこなせるわかりやすさ」だ。日本一のSalesforceユーザー企業を決める「SFUG(Salesforce User Group) CUP」の決勝で、HR(Human Resources:人材)サービスを提供するアクシスコンサルティング(アクシス、千代田区、単体従業員数61人)の南薫氏も「システム管理経験のない社員でも、Salesforceの基本機能とAppExchangeを活用し、顧客エンゲージメントの強化やデータ駆動型の業務改善ができた」と語る。
では、どのようなステップで、「Salesforce活用の文化」を社内に浸透させていったのだろうか。
事例を示してSalesforceのメリットを訴求

アクシスコンサルティング 南氏
アクシスがSalesforceを導入したのは2016年。それまでは人材紹介に特化したシステムを利用していたが、顧客を中長期的にフォローする機能がないとの理由から、Salesforceの導入を決めた。南氏は「Salesforceを導入してから4年半が経過したが、現在は顧客情報を(単発イベントがあった時だけ記録する)“点”から、時間を軸とした“線”で記録できるようになった」と語る。
また、Salesforceに備わるレポートやダッシュボードを利用し、さまざまなデータを可視化することでPDCAサイクルを素早く回すことができるようになったという。さらに他システムとの連携で、会社全体の業務効率化も実現している。
とはいえ、こうした結果に到達するまでには、さまざまな試行錯誤があった。南氏は「社員がSalesforceを活用するまでには、大きく分けて3つのステップがあった。それは『入力の定着化』『可視化』『行動の変化』だ」と説明する。

アクシスが掲げたSalesforce活用までの3ステップ。「入力の定着化と可視化が実現できれば、おのずと行動も変わっていった」(南氏)という(出典:アクシスコンサルティング)
入力の定着化では、営業現場の担当者から上がった「これまでのやり方を変えたくない」「入力が面倒くさい」といった声に対し、入力することのメリットを示して理解を得るようにした。
具体的には、これまでのExcelであれば、複数回コピー&ペーストしていたデータを、Salesforceなら1回で済むことを伝えたり、すでにSalesforceを活用している社員の事例を共有したりした。こうした地道な努力で、現場担当者に「Salesforceで現在の課題を解決できる」ということを理解してもらったという。
次のステップである可視化の目的は、過去のデータをすぐに参照できる環境を構築することで、二度手間だった作業を効率化し、顧客満足度を向上させることだ。
「たとえばお客様との電話でもSalesforceを使えば、『いつ』『どの顧客に』『何を話したか』といった活動内容が、通話終了後にすぐに記録できる。また、お客様へのメールアンケートもSalesforceと連携させることで、お客様に対するレスポンスが早くなり、結果的に顧客満足度向上にもつながった」(南氏)
同時に顧客対応を行うキャリアコンサルタントの業務効率も向上した。同じ作業に要する時間が従来の3分の1程度となり、空いた時間を顧客対応に充てられるようになったという。