ヴイエムウェアは、9月29日~10月1日に開催した年次カンファレンス「VMworld 2020」での発表内容などについて説明した。17回目となる今回のVMworldは、初のオンライン開催となり、日本時間10月1日正午時点で15万人以上が参加登録し、10万人以上が基調講演やセッションを視聴したという。従来のリアルイベントでは、米国開催では約3万人、欧州開催では約1万人が参加したが、これを大きく上回る結果となっている。
VMworld 2020では、同社が掲げる“Any App、Any Cloud、Any Device”のビジョンや、不透明な時代にも対応するデジタル基盤の「Digital Foundation」、そしてモダンアプリケーション、マルチクラウド、デジタルワークスペース、Virtual Cloud Network、本質的なセキュリティで構成される5つのソリューシヨンプラットフォームという観点から、多くの製品やサービスなどを発表してみせた。
重要な発表の1つが「vSphere 7 Update 1」になる。2020年4月にリリースしたvSphere 7にとって、初のメンテナンスリリースだ。ここには3つの特徴があるという。
1つ目は、vSphere with Tanzuにより、Kubernetesを迅速かつシンプルに展開する「Developer Readyなインフラ」の実現。説明を行ったヴイエムウェア チーフストラテジストの高橋洋介氏は、「2020年3月に、VCF with Tanzuをリリースしたが、新たにvSphere with Tanzuを提供することで、vSphere単体で利用する際にもTanzuの機能を提供する。vSphereに実装されている分散仮想スイッチVDSと利用し、Tanzu Kubernetes Gridを動作できる。また、Project Antreaにより、L2およびL3のコンテナーネットワーク機能も実装している。Kubernetesの利用者の要件に合わせて、最適な選択肢を提供することできる」と述べた。
Project Antreaの概要
Project Antreaは、VMwareがオープンソースプロシェクトとして取り組んでいるKubernetesをサポートするネットワーク機能。CNI(コンテナーネットワークインターフェース)にOpen vSwithを組み合わせ、Kubernetesのネットワークワークロードをハンドリングするものになるという。「オンプレミスのKubernetes、パブリッククラウド上のKubernetes、マネージドKaaS(Kubernetes as a Service)上のKubernetesに対して、同じネットワーク機能を提供することになる」(高橋氏)
さらに、Tanzuにエディションを新設した。vSphere環境でKubernetesを実行する「Tanzu Basic」、マルチクラウド環境でKubernetesの実行と管理を行う「Tanzu Standard」、DevOpsに組み込まれたKubernetes上のワークロードを実行する「Tanzu Advanced」、自動化されたアプリケーション実行環境による開発生産性の向上を実現する「Tanzu Enterprise」を用意している。「顧客のステージ、システム要件に合せて最適なものを導入してもらえるよう4つのエディションを用意した」(同)
2つ目が「さらなる拡張性の追求」。Monster VMへの対応スペックをさらに強化し、あらゆるアプリケーションやワークロードに対応することになる。高橋氏は、「Monster VMは2015年から提供しており、SAP HANAのような大型のインメモリーデータベースにおけるワークロードに耐えるための仮想化環境となる。vSphere 7 Update 1では、1つの仮想マシンに対して最大で768の仮想CPUと24TBメモリーを実装できる。また、vSphere Cluster1つ当たりの最大ホスト数を96ホストにまで拡張する。今後発生するワークロードにも適合させるように進化をさせていく」とした。
vSphere 7 Update 1での拡張性
3つ目は「運用の簡素化」だ。vSphere Lifecycle Managerの適用範囲をNSX-Tに拡張、vSANストレッチクラスターやフォルトドメインを認識したアップグレードにも対応するという。さらに、vSphere 7 Update 1への拡張に合せてvSANを機能強化している。「vSAN 7 Update 1」と呼ばれるもので、ストレージの共有によるコスト最適化などを図ることができる「HCI Mesh」の拡張性を強化した。モダンなステートフルサービスを低価格で実行できる新しい機構「vSAN Enhanced Persistence」プラットフォームを実装する。加えてvSAN File Serviceの機能強化では、NFS v4.1およびv3に加えて、SMB v3および2.1、ActiveDirectory認証、Kerberos認証といった主要なプロトコルをサポートした。
vSAN Enhanced Persistence
また、vSANの性能を最適化する取り組みとして「vRealize AI Cloud」を発表した。これは「Project MAGNA」と呼ばれていたもので、継続的に自動調律を行うデータセンターを実現するというコンセプトを商用化したものという。クラウドマネジメントツールのvRealize Operationsのデータをもとに、継続的にトラッキングし、データレイクの中で解析してそれに基づいて動的にチューニングしていく。現時点ではvSANのみの対応だが、NSXの領域にまで広げていくとしている。
vRealize AI Cloud
その他に、オンプレミスとサブスクリプションを融合させた新たなライセンスモデルとなる「VMware vRealize Cloud Universalを発表、「オンプレミスとSaaSでライセンスを柔軟に切り替えクラウドを管理できる。あらゆるインフラに対して一貫性のとれた統合運用が可能になる」(高橋氏)