量子コンピューティングを手がけるD-Waveは、クラウドをベースにした同社のコンピューティングプラットフォームで量子ビット数を2倍以上に拡大している。従来のコンピューターによる数値処理では丸1日かかるような現実世界の問題をものの数分で解けるようになっていると同社は述べている。
「Leap」と名付けられたサービスを提供する同社は、開発者にクラウドベースの量子プロセッサーへのアクセスを許可し、リアルタイムでのアプリケーションのテストやトライアルを実行できるようにしている。
1世代前の「Leap 2」では、2000キュービットの量子プロセッサーが使用されており、各キュービットは隣接する6つのキュービットと接続する能力を備えていた。D-Waveはこのテクノロジーのパフォーマンスを2倍以上に増強した。Leapプラットフォームを通じて利用できる、今回発表された「Advantage」システムは5000キュービットもの量子プロセッサーを搭載しており、各キュービットは隣接する15のキュービットに接続する能力を備えている。要するに、プログラマーは量子アプリケーションを開発する上で、より規模の大きなグラフ構造を使えるようになるわけだ。
Leapを使う開発者は、ハイブリッドソルバーサービス(HSS)と呼ばれる機能にもアクセスできる。これは量子リソースと古典的リソースの双方を組み合わせて計算上の問題を解決するというものだ。D-Waveが「両世界の長所を備えた」アプローチと呼ぶ同機能を用いることで、ユーザーはかつてないほどの規模と複雑さを有する問題を扱えるようになるという。
AdvantageではHSSも強化されており、アプリケーションで取り扱えるパラメーターの数が最大100万にまで増やされている。これは1世代前の同テクノロジーで扱えるパラメーターの数が1万しかなかったことを考えると大きな進歩といえるだろう。
D-Waveの最高経営責任者(CEO)Alan Baratz氏は米ZDNetに対して、「2月にLeapをローンチした際、われわれは現実世界のアプリケーションをサポートできる段階に入ったと考えていた」と述べた上で、「ある種のアプリケーションについてはその通りだったが、それは現実的な規模のアプリケーションのうちのほんの小さな部分でしかない」と述べた。
そして、「新たなハイブリッドソルバー上で100万のパラメーターを扱えるようになったことで、われわれはより幅広いさまざまなアプリケーションをサポートできるようになった」と続けた。
実際のところ、業務上の問題を量子コンピューティングによって解決しようとしている多くの企業が既にD-Waveのもとに訪れているという。Baratz氏によると、多くのケースで顧客は既に小規模ながら量子サービスを導入しており、現在フルスケールでの実装に向けて取り組んでいるところだという。
Baratz氏はカナダの食料品チェーンSave-On-Foodsの事例を紹介した。Save-On-Foodsは数カ月前に、同社の物流をより優れたかたちで管理するために量子テクノロジーを利用できるのではないかと考え、D-Waveに問い合わせてきたのだという。