富士通が社内DXを説明--東証システム障害に謝罪も

國谷武史 (編集部)

2020-10-05 13:19

 富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏は、10月5日に開いた記者会見の冒頭で、1日に発生した東京証券取引所でのシステム障害について、「機器を納入、開発する企業のトップとしてお詫びする。誠に申し訳ございませんでした」と謝罪した。

富士通 代表取締役社長 最高デジタル変革責任者(CDXO)の時田隆仁氏
富士通 代表取締役社長 最高デジタル変革責任者(CDXO)の時田隆仁氏

 記者会見は、CDXO(最高デジタル変革責任者)を兼務する時田氏と、4月にSAPジャパン社長から富士通に参画した執行役員常務 CIO(最高情報責任者)兼CDXO補佐の福田譲氏が7月に立ち上げ指揮する同社全体のDXプロジェクト「フジトラ(富士通トランスフォーメーション)」について説明を行った。

 時田氏は、2019年9月に開いた経営方針説明会で、同社が「IT企業からDX企業に変わる」と表明。その後にDXのビジネスについて、従来のITシステムサービスなどの事業領域を中心とする「スタビリティービジネス(安定事業)」と、新規事業領域の「グロースビジネス(成長事業)」に定め、この両輪で推進するとした。

 会見で時田氏は、「富士通はグローバルビジネスを展開する日本のテクノロジー企業であり、テクノロジーの力で世界のお客さまや社会で変革し、ウェルビーイングを提供する会社にしたいと考えている。パンデミックに世界がさらされている中、DXで生活を豊かにする変革の取り組みで、富士通が中心的な役割を果たし、その役割になりたいと考えている」と説明した。

 東証のシステム障害について、現在原因究明を行っているという。その上で「2020年度はイノベーションで社会に信頼をもたらすというパーパス(目的)を定め、そこに努力する」(時田氏)と表明、また、「(富士通が開発した東証の)『arrowhead』がDXに該当するか否かは言えないが、日本の金融システムの信頼を脅かしてしまったことをお詫びしたい。原因究明を徹底してネバーストップの信念を実現する。ただ、『信頼』という中にだけ閉じこもっていても真の信頼を果たすことはできず、DXを推進することが不可欠」と、改めて同社の改革路線の方針を示した。

 福田氏は、CIOと時田氏の補佐役として富士通内部のDXを推進している。時田氏は、「DXはテクノロジーだけでなく同時にプロセス、制度、風土、体質などを変えていかないといけない。DXに取り組む富士通の姿がリファレンスになりお客さまのDXに貢献していく」とし、福田氏がこれらの取り組みを説明した。

富士通 執行役員常務 最高情報責任者(CIO)兼CDXO補佐の福田譲氏
富士通 執行役員常務 最高情報責任者(CIO)兼CDXO補佐の福田譲氏

 DXに関して福田氏は、最初に「D(デジタル)よりもX(トランスフォーメーション)が大事で、DはXを実現するための方法」と前置きし、DXを組織・制度とITシステムの2つの点で推進しているとした。

 組織・制度面では、リーダーシップ、現場、風土変革の3つをテーマに設定。リーダーシップでは、時田氏や福田氏ら経営陣が変革にコミットする。現場では、各部門の役員が計17人の「DXオフィサー」を任命し現場のノウハウや経験などをDXにつなげる。さらに、経営陣とDXオフィサーを橋渡しする機能として22人の「DX Designer」が組成された。

DXの組織体制概要
DXの組織体制概要

 風土変革では、先述のスタビリティービジネスとグロースビジネスの両立を目標に掲げるが、現実的には「制度や環境がスタビリティービジネスに寄り過ぎており、バランスを図り、グロースビジネスをスピードアップさせる必要がある」(福田氏)とした。

 これら変革におけるITシステム面の取り組みでは、ERP(統合基幹業務システム)の全世界共通化や「従業員体験(EX)」を挙げた。福田氏は、経営、業務プロセス、データ、ITを標準化することでデータドリブンなビジネスを確立する必要があるとし、グローバルシングルインスタンスERPの導入、そして、時田氏直下の「データ&プロセスオーナー(DPO)」を配置して事業部門や市場地域ごとにビジネスプロセスの標準化を進めていると述べた。この取り組みで1000億円以上を投資するという。

データドリブンビジネスへの体制
データドリブンビジネスへの体制

 EXは、従業員と組織の関係性に着目してアンケートなどから働きがいや組織への感情といった状況を分析、可視化して、その改善や向上を目指すもの。同社でもアンケートを行い、例えば、テレワークについては継続に好意的な意見が多い一方で、生産性低下などを感じたという声が多かったといい、7月に発表した「Work Life Shift」施策にもこの分析結果を参考にしている。

 福田氏は、「従来ならExcelを使って作業で集計、分析して時間や労力をかけたが、現在はビッグデータやAI(人工知能)分析ですぐに状況を把握し、必要な施策をすぐに打てる。その過程で例えば、(新型コロナウイルスの感染対策として)自転車通勤を解禁したり、リモートワーク環境の整備支援を行ったりした」と説明した。

従業員アンケートの分析結果の一例
従業員アンケートの分析結果の一例

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