富士通、社員約13万人の働き方を変える「FUJITSU Work Life Shift」を提供開始

大河原克行

2020-10-12 06:00

 富士通は10月9日、同社の働き方改革における実践知とテクノロジーを融合させたソリューション群として、「FUJITSU Work Life Shift」の提供を開始すると発表した。現在は1300億円規模のFUJITSU Work Life Shift関連ビジネスを、年率15%増の成長を目指し、2023年度には約2300億円の売り上げを目指す。

 FUJITSU Work Life Shiftは、同社のグローバル拠点を含む約13万人の全社員による実践をもとに、新たな働き方を実現する17種のソリューションを体系化したもの。「Smart Working(最適な働き方の実現)」「Borderless Office(オフィスの在り方の見直し)」「Culture Change(社内カルチャーの変革)」の3つのカテゴリーで、59種類のサービス、製品を用意する。顧客ごとに組み合わせ最適なソリューションとして提供していく。

「FUJITSU Work Life Shift」の構成
「FUJITSU Work Life Shift」の構成

 また、FUJITSU Work Life Shiftの新たなサービスとして、「FUJITSU Collaboration Space」も11月30日から提供する。テレワークによって離れて仕事をする人同士が、同じ仮想空間において共同作業ができるようにする。

 富士通は2020年7月に、ニューノーマルにおける新たな働き方として「Work Life Shift」を提唱、「働く」ことだけではなく「仕事」と「生活」をトータルにシフトして、Well-beingを実現するコンセプトと位置付けている。

 固定的なオフィスに出勤するという従来の通勤の概念を変えて、多様な人材が高い自律性と相互信頼に基づいて、場所や時間にとらわれない働き方を実現していく。人事制度とオフィス環境整備の両面から各種施策を推進し、顧客への提供価値の創造と、自らの変革に継続的に取り組むことを目指す。ここでは、オフィスの全席をフリーアドレス化することなどによって、2022年度末までにオフィスの規模を現状の50%程度に最適化することも盛り込んでいる。

 また、2015年度から社員のコミュニケーション基盤をグローバルで統一し、2016年度からは先進技術を継続的に活用できるようにマルチクラウド環境への移行を推進してきた。2017年度からは場所にとらわれないフレキシブルな働き方を可能とするテレワーク制度を導入している。同社では、こうした取り組みの成果もソリューション群の中に反映している。

富士通 執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏
富士通 執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏

 執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏は、「富士通がWork Life Shiftを発表して以降、多くの問い合わせがあった。そこで富士通が実践してきたもの、個別にサービスとして提供してきたものを体系化し、提供することにした」と語り、「実践の中ではさまざまな失敗や苦労があり、例えば、テレワークで一定時間に全員のレスポンスが悪化するということがあった。調べてみると、ウイルスチェック機能が同時に走っていたことが分かり、時間をずらすことにした。やってみないと分からないことが多くあり、こうした細かいことも含めてソリューションとして提供する」とした。

 FUJITSU Work Life Shiftには、グループ企業でデジタル変革(DX)の事業を手掛けるRidgelinezや、同社の人事および総務などの現場部門を含めた「FUJITSU Work Life Shiftコラボレーションチーム」によるコンサルティングのほか、グローバルに統一された17種類のソリューションによる短期導入、「FUJITSU Work Life Shift定着化支援チーム」を通じて、動画やテンプレート、利用サポートなどによる導入教育、利用状況の把握やハンズオンなどによる活用推進も含めている。

 理事 マネージドインフラサービス事業本部長の古賀一司氏は、「大手企業ではテレワークの品質をより高めたいというニーズがあり、中堅中小企業では、今後テレワーク導入を本格化することになり、その点からも支援をしたい。ツールの特色に合わせて利用ルールと社内コンセンサス、使い勝手のバランスを意識し、定着化や活用支援にも力を注いでいく」とした。

定着化・利活用支援に向けたアプローチ
定着化・利活用支援に向けたアプローチ

 「Smart Working」では、テレワークにおけるセキュリティや品質面の課題に対応したソリューションなどを用意する。自社活用によるノウハウをテンプレート化したり、活用促進に向けた現場サポートを行ったりする。

 Microsoft 365やMicrosoft Teams、Boxなどのコミュニケーションサービスをグローバル共通のテンプレートに基づいて最短5営業日で提供する「Modern Workspace」、シンクライアント端末の活用により端末紛失による情報漏えいリスクを回避するクラウド型仮想デスクトップサービスを最短5営業日で提供する「Secure Remote Working」、拡張と縮退が柔軟にできるゼロトラストネットワーク環境をクラウドサービスとして提供する「Zero Trust Network」などをラインアップしている。

 「『Modern Workspace』では、既に地方銀行向けのテンプレートを用意しており、今後さまざまな業種に展開していく。『Zero Trust Network』では、クラウドへの接続応答を改善し、ダウンロードで7.8倍、アップロードで1.7倍の高速化を図った実績がある。100カ所以上のアクセスポイントを通じて、自宅や海外からも快適に業務が行える環境を実現できる」(古賀氏)という。

 「Borderless Office」では、自宅やオフィスといった働く場所や、働く時間の多様化に対応し、サービスデスクによる運用の自動化や、長年に渡り培ったノウハウを活用したオンサイトサービスによってIT部門の対応負荷を低減する。

 富士通のサービスデスクを通じて、電話やウェブ、チャットなどでモバイルワークに必要な各種申請や問い合わせを受けられる「Customer Experience Center」、180カ国以上で端末提供や修理などのオンサイトサービスを提供する「Workplace Support」なども用意する。古賀氏は、「『Workplace Support』は、家庭内で子供がジュースをこぼしたり、PCを落としたりといった過失も保証し、スマートフォンで午後3時までに修理を依頼をすれば翌営業日に代替機を自宅に発送する。家庭での引き取りと配送のサービスは大手ベンダーでは日本初」とした。

 「Culture Change」では、ニューノーマルな社会に向けた働き方において、チームの働き方や部下との関係性など、働き方の変化に対応。日々の業務において、プロジェクトメンバー間のコミュニケーションの活性化、作業状況の可視化や共有などを円滑に行うサービスを提供する。具体的には、共創空間を提供する「FUJITSU Collaboration Space」などによる共働の促進を支援する「Virtual Collaboration」、富士通のAI(人工知能)技術のZinraiとMicrosoft 365 AIを活用したソリューションによりPCの利用状況を可視化して上司と部下の円滑なコミュニケーションを支援し、生産性向上への施策検討を支援する「Workforce Analytics」などを提供していく。

 なお、FUJITSU Collaboration Spaceでは、富士通研究所の空間ユーザーインターフェース技術を活用し、リモートワークでもメンバー同士が同じ空間上で作業をしているような環境を提供する。テキストファイルや動画、音声、手書き文字、CADデータなどの多様なデータを複数メンバーが同時に入出力、共有、編集でき、中断した作業も利用ログをさかのぼってデータを呼び出して利用可能になる。

 「Virtual Collaborationでは、実際の会議室と同じように手書きスケッチ、資料を貼り付け、即座にアイデアを共有てきる。仮想空間でありながら「そこ」「ここ」といった言葉でコミュニケーションを行えるのも特徴という。

富士通 理事 マネージドインフラサービス事業本部長の古賀一司氏
富士通 理事 マネージドインフラサービス事業本部長の古賀一司氏

 FUJITSU Work Life Shiftの今後の展開について古賀氏は、「グローバル視点で働き方改革を加速させ、実践知を積み上げるほか、新たなテクノロジーを開発、実装して、さらにソリューションを拡充する。また、医療や建設現場などの業務に関連するサービスも順次提供する予定で、これによりニューノーマル社会に適した持続可能で多様な働き方の実現に貢献する」と述べた。

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