海外コメンタリー

デジタルトランスフォーメーションの明暗を分けるのは何か

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-10-19 06:45

 さまざまなデジタルテクノロジー(これにはエンドユーザーデバイス、LANやWAN、クラウドのアプリケーションやサービス、アナリティクス、モノのインターネット(IoT)などが含まれる)が、企業経営を根底から変えている。しかし、「デジタルトランスフォーメーション」(DX)という言い方は、多くの意味で不完全な表現だと言うべきだろう。なぜならこの言葉は、何らかの魔法のようなテクノロジーによって、組織をより効率的で、より収益性の高い、新たな状態に移行できることを暗示しているからだ。もちろん、完璧な計画を立てて、パイロットプロジェクトを完璧に実施し、完璧な本番環境を展開して完璧な運用管理を行えば、短期間のうちにDXを成功させることも可能かもしれない。しかし大抵の企業では、スタートでつまずいたり、間違った判断をしたり、途中で失敗したりして、デジタル化は少しずつしか進まないものだ。

 そのため、企業のデジタル化の成熟度は、その企業が身を置いている業界や、経営陣や事業計画の質や、(顧客向けと社内向けの両面で)新たな業務プロセスをどれだけ素早く開発し、導入できるかといった要因によって異なってくる。

パンデミックの影響

 新型コロナウイルスの蔓延が引き起こした社会的、経済的混乱は、企業のDXが果たす役割を考える上で、これまでは存在しなかった評価方法をもたらした。デジタル化の成熟度が高い企業は、DXが進んでいない企業と比べて、ロックダウンや景気後退をうまく乗り越えることができたか?デジタル化が遅れている企業は、今回のパンデミックによって刺激を受けて、もっと大胆な行動を取り、デジタル技術を導入するようになっただろうか?

 前者(パンデミックをうまく乗り越えられたか)のテーマについては、ロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)の研究者らが、企業が現在の危機にどう対応したか、その中でデジタル技術はどのような役割を果たしたかを検証している(幸い、比較対象として、2000~2003年と2008~2009年の景気後退時の調査データが利用できる)。

 LSEの研究者は、企業の危機対応シナリオを次の4つに分類した。調査対象企業の30%は、既存資産を酷使する戦略(現状を維持し、スタッフの労働量を増やし、IT投資を棚上げし、アウトソーシングを行う)を取っており、35%は事業の維持を優先する戦略(顧客の維持と獲得に力を入れ、コストを最小化し、これらの目標を達成するための技術やその他の支出に資源配分を絞る)、20%は先送り戦略(事業戦略のタイムケールを変更して、予測可能性が低い事業環境に適応させ、計画されていた技術投資は継続するが投資ペースを遅らせる)、15%は適応とレジリエンスの向上を優先する戦略(危機を乗り切るための業務プロセス、技術、人材に投資し、事業戦略を変更して5年後に競争上の優位を得ることを目指す)を取っていた。

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