ノキアソリューションズ&ネットワークスは10月15日、同社の5G(第5世代移動体通信システム)技術を報道機関向けに披露した。同社の取り組みを包括的に紹介するとともに、8月に就任した本社新CEO(最高経営責任者)のPekka Lundmark氏が3Dホログラム映像で登場したのに続き、10月1日付で日本法人 代表執行役員社長に就任したJohn Lancaster-Lennox氏も日本の事業戦略について説明した。
Nokiaの社長兼CEOであるPekka Lundmark氏。会場に設置された「5G遠隔3Dホログラム投影プレゼンテーション」のデモンストレーション設備を通じ、立体ホログラム映像でスピーチを行った。昔の同種のデモに比べると格段に品質が高まっていたことは間違いないが、実用的かどうかはまた別問題かと思われる
Lundmark氏は、会場に設置された「5G遠隔3Dホログラム投影プレゼンテーション」のデモンストレーション設備を使って登場。同氏はまず、長期的な視点である「Vision」の重要性を強調した上で、来るべき“第4次産業革命”に関して「日本は先頭を走っており、産業、公共サービス、コネクティビティーの領域でリードしている。“Society 5.0”は国の戦略の枠を超えたデジタル化のロードマップであり、官民連携や官分野の無駄撤廃を目指す極めて前向きな取り組みだ。Nokiaは重要なパートナーとしてSociety 5.0のあらゆる段階を支えていきたい」と語り、日本市場への強力なコミットメントを明らかにした。
続いてノキアソリューションズ&ネットワークス 代表執行役員社長のJohn Lancaster-Lennox氏は、日本の主な重点分野として業界最高クラスのエンドツーエンドのソリューションを、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどの顧客に提供する点を強調。さらに、5Gは無線という枠組みを超えた存在であるとし、Society 5.0を通じて企業規模の拡大を支援していくとした。
ノキアソリューションズ&ネットワークス 代表執行役員社長のJohn Lancaster-Lennox氏
国内の主要モバイルキャリア全社にソリューションを提供して足がかりを築いており、今後は5Gの本格商用化に向けてさまざまな領域で取り組みを強化する一方、Society 5.0関連のニーズにも積極的に対応していく、という意味になるだろう。
最後に、技術セミナーという形で同社の最高技術責任者(CTO)の柳橋達也氏が5Gの現状や今後の展望に関して技術的な視点から解説した。同氏はまず、5Gグローバルネットワーク展開のデータを示し、2020年8月末の段階で「92の事業者が、商用5Gの提供を世界的に発表」しており、「開始したサービスの大部分は北米、欧州、アジアに集中している」と紹介した。
ノキアソリューションズ&ネットワークス CTOの柳橋達也氏
また、同氏は韓国におけるフィールドでの実測値がシャノンの定理によるスループットの理論値にほぼ一致するという結果を示し、「無線リソースの効率的利用はシャノン限界に迫っている」(=高速化の限界に達しつつある)とし、これからの5Gの方向性として「より広い帯域を確保するためのさらなる高周波領域の活用」と「スループットが支配的なビジネス領域からの脱却(プライベートワイヤレス含む)」の2つの解を示した。
まず、同氏が「さらなる高周波領域」と言っているのがいわゆる「ミリ波」であり、5Gの周波数帯としてミリ波を利用することで「低遅延」「高精度な端末位置情報推定」など、5Gの特徴として喧伝されている機能の多くは実際にはミリ波に移行しないと十分なレベルでの活用が難しいことを指摘した。
ミリ波に関しては、到達距離が短い/直進性が強い/雨などで急激に減衰するといったマイナス面があるため、公衆無線ネットワークとしてはごく限定的なエリアでしか使われないという見方が一般的だが、企業のキャンパス内や工場内などで5G技術を活用する「ローカル5G」で活用した場合には大きなメリットが得られる可能性がある。同氏はコスト面で「TCOが大きくなってしまう懸念」も指摘しているが、低遅延かつ高精度な位置情報を活用することで工場内ロボットなどの機器のより高速高精度な制御が可能になることも期待できる。5Gの今後の展開に関しては、公衆無線ネットワークとローカル5Gの両方の動向に注意を払っておく必要がありそうだ。
エンタープライズ市場でのミリ波活用の展望