日立製作所は、独自の計算技術CMOSアニーリングを活用し、数十人や数百人規模の勤務シフトを作成する「勤務シフト最適化ソリューション」の提供を開始した。
CMOSアニーリングは、日立が開発している新型コンピューター。磁性体の性質を説明するために考案されたイジングモデルを用いて、組み合せ最適化問題を解くことに利用できる。量子コンピューターを疑似的に再現し、大規模で複雑な組合せ最適化問題を高速に解いていく。アニーリング方式は、磁性体の振る舞いを表す統計力学上のモデルであるイジングモデルを物理現象として用いて組み合せ最適化問題を処理する。
同ソリューションは、需要に応じた「最適な人員配置」と「シフト作成の負荷軽減」を実現する。提供開始に先立ち、三井住友フィナンシャルグループのコールセンターで活用し、共同で実務上の評価観点を検討・実証した。その結果、人手で作成する従来の勤務シフトと比較して余剰配置の発生を約80%削減するなど、要員配置の適正化に対する高い有効性が確認できたという。
最適配置では、従来のシフトで過剰に割り当てていた人員が適正化されるとともに、人員が不足していた時間帯に適正な人員が割り当てることで勤務者の負担を軽減する。例えば、コールセンターなどでは対応受付までの待ち時間が短縮され、オペレーターにつながりやすくなるなどのメリットが期待できるという。さらに、オプションサービスとして、過去の対応実績をもとに、将来の業務量とそれに応じた必要人員を予測する機能の追加開発も可能だ。担当者の経験知ではなく、データに基づくより精緻な必要人数を提示することができる。
シフト作成の負荷軽減では、シフトを決定する上で必要な条件を個別にカスタマイズして追加し、各条件に即した設定方法や、設定した場合の効果検証なども含め、ユーザーの使い勝手や実際の運用を考慮しながらセミオーダーメイドで対応していく。シフト作成者がウェブブラウザーから、日付・時間とそれぞれの必要人数、勤務者の有給休暇、勤務希望日などを入力するだけで勤務シフトが作成できるようになり、計算自体は数十分程度で完了する。シフト作成後に条件に変更が発生した場合にも、即時に再作成が可能。膨大なパターンの中から最適解を計算するため、勤務者の希望を柔軟に取り入れることが可能となる。
同ソリューションは、CMOSアニーリングの利用環境をクラウドサービス形態で提供し、マシン購入や専用回線の設置は不要だ。今後、同社ではCMOSアニーリングの開発をさらに強化し、金融商品のポートフォリオ作成や、物流倉庫におけるピッキング作業の高度化といったさまざま分野に活用していく。利用価格は個別見積もりとなっている。