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展望2020年のIT企業

“大リーグ”入り目指す富士通--日英共同の標準ERP作りからスタート

田中克己

2020-10-23 07:00

 富士通が“大リーグ”入りを目指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクト「フジトラ」と呼ぶ構造変革に乗り出した。大リーグとは米Microsoftや独SAPをはじめ、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのグローバルカンパニーと戦える力を備えることを意味する。そのため、時田隆仁社長は2019年9月に「IT企業からDX企業」への変身を宣言し、大リーグに加盟する最低条件の営業利益率10%を目標に掲げたのだろう。その仕組み作りの一つがERP(統合基幹業務システム)の標準化になる。それを指揮するSAPジャパン前社長の福田譲執行役員常務に10月中旬に話を聞いた。

富士通の福田譲執行役員常務
富士通の福田譲執行役員常務

 「日本の基準で、世界で戦っても勝てない」。福田常務は大リーグ入りに向けたグローバル標準導入の重要性を指摘する。簡単に言えば、決済業務はインド、採用業務はフィリピンなどと、最適な地域に業務を一本化すること。グローバルカンパニーは付加価値の低い業務を海外に移すなどし、「地球上に一つの会社」(福田常務)にする。

 その先駆けが2023年4月の稼働を目指すERPの標準化だ。これまでもテンプレートを用意するなど標準化に取り組んだが、各国でバラバラなITシステムになってしまった。グループ会社や事業部門でも異なる仕様になっていたという。「これではアウトだ」(福田常務)。そこで、ITシステムを世界に一つにするため、日本と英国法人が一緒に手掛ける。日本独特の仕様になり、「何でこんな効率の悪いひな形を用意したのか」などと酷評されて、各国でバラバラになることを避けるためでもある。

 売上高4兆円、社員13万人の大企業の標準化は、福田常務によれば、10年かかる大プロジェクトになる。富士通はそれを2年半で実行するため、グローバルカンパニーが経験した知見を活用しながら、業務(ヨコ軸)と事業(タテ軸)からプロセスなどの在り方を見直す。ヨコ軸の経営管理や受注、販売、サービスデリバリー、購買、会計などに関しては、各部署のエースを集めたDPO(デジタル&プロセス・オーナー)が事業や地域を横断したデータや業務プロセスのグローバル標準化に取り組む。副社長の古田英範氏が責任者になる。一方のタテ軸の事業や地域ごとの改革をデザインするDXO(デジタルトランスフォーメーションオフィサー)をまとめるのは福田常務になる。その2つを統括するのが時田社長だ。

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 富士通の社員は解決すべき課題を分かっているという。各部署から300近い既存事業の効率化・高収益化、戦略事業、事業創出、人材育成・働き方、プロセスの標準化などに関するテーマが既に上がってきており、その中から選択をして3カ月で解決していく。解決できなかったら、原因や理由を検証、学習する。それでも解決できなければ、担当の交代もある。「選手交代は自然なこと」(福田常務)。チームを補強するために、海外やグループ各社からも参画させる。それを繰り返し、全ての課題を解決する。

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 プロジェクトのゴールは「経営戦略を遂行し、試合に勝つこと」(福田常務)。つまり、時田社長が宣言した営業利益率10%を達成することだ。だが、目標達成にはこうした構造改革やシステム刷新に加えて、攻める強力な“弾”が必要になる。この10月に開催した研究開発戦略の説明会では、5G(第5世代移動体通信システム)やAI(人工知能)、コンピューティングなどの重点分野を説明したものの、前年の内容と大きな変化はないように思えた。近い将来、競争優位な製品やサービスにし、世界に打って出る策がいる。世界に通用する売れる製品やサービスがなければ、海外ITベンダーのサービスを組み合わせる収益性の低いインテグレーション事業に追いやられてしまうからだ。

 富士通はこれまで何度も営業利益率10%を目標にしたが達成できなかった。「製品やサービスはなくても、国内のSI事業で収益を稼げられるし、つぶれるはずはない」。過去の話だ。業績も影響力も年々小さくなっている。時田社長はその理由を分かっているし、世界市場で勝負するプレイヤーになる覚悟を示す。

 ある富士通OBは「SAP導入の壮大な実験場」とやゆする。だが、グローバルカンパニーへの第一歩になるERPの標準化を成功させなければ、先を予測した戦略を組み立てる大リーグ入りから次の段階に進むことはできない。後は、時田社長が経営戦略を実行するだけだ。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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