デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるには、最先端のシステムやサービスを調達することと同じくらい、企業文化の変化をどうサポートしていくかが重要になる。
最近開催されたオンラインイベント「DTX: NOW」では、何人かのITリーダーが講演を行い、この6カ月間に経験した大きな困難にどう対応したかについて説明するとともに、ポストコロナ時代にDXを成功させるためのヒントを紹介した。
1.デジタル化の計画策定サイクルを早める
英国戦略軍デジタル化担当ディレクターであるTom Copinger-Symes少将は、軍隊では、変化を起こすための計画(新しい戦闘機や戦艦の設計など)を実現するには、数年から長ければ数十年かかることも珍しくないと話す。しかし同氏によれば、動きが遅い組織も、新型コロナウイルスによって素早く動かざるを得なくなったという。
「危機のときには、リスクを取るのが普段よりもずっと簡単になる場合がある。その目的に向けて資源を動員でき、危機がなかったときに感じていた懸念の一部は消え失せ、人々には権限が与えられ、リスクを取ることに前向きになる。そして、自分が普段よりもずっと速く行動できるようになっていることに気づく」と同氏は語った。
軍の役割は、どんなときにも回復力を保ち、ショックに対処することだが、新型コロナウイルスの蔓延によって発生した重大な技術的課題に、素早く一連の対応を行う必要が生じた。それらの課題の中には、リモートワークに対応するためのキャパシティの増強や、英国民保健サービス(NHS)のノートPCに関する支援、仮設病院の設置の支援なども含まれていた。
「コロナ禍は大変な事態だが、いずれやる必要があった多くの変革を、早送りで進める絶好の機会にもなっている」とCopinger-Symes氏は言う。「不幸を経験している人もいるので、この事態がプラスになったとは言いたくはないが、私たちは歩む速さを変えており、そのことによって生まれるはずの機会もたくさんある」
英軍もほかの組織と同じで、コロナ禍によって生じた優先事項に対応するために、テクノロジー主導で変革を起こすための5カ年計画を棚上げする必要があった。しかし、この重視すべき点の変化は、組織の優先順位の見直しを後押しした。Copinger-Symes氏は、特に技術に関しては、計画立案サイクルに時間がかかる状態からの脱却が今後も続いてほしいと考えている。
「これは変えなければならない。競争力の源泉は、ハードウェアではなくソフトウェアになってきている。ソフトウェアに関する計画立案サイクルが10年に及ぶようでは、十分な競争力を得ることはできないだろう」と同氏は言う。