SAPは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる厳しい状況に直面する中、顧客ベースのクラウドへの移行と、共同イノベーションへの注力、同社のプラットフォームをまたがった単一データモデルへの移行を加速させようとしている。
同社の2020会計年度第3四半期の決算発表にはいくつかの不本意な驚きが含まれていた。その最大の驚きは、2020年通期見通しの下方修正だった。また、ソフトウェアライセンスの売上高が低迷し、顧客は今までよりも速いペースでクラウドに移行しながらもSAP製品だけでなく競合他社の製品も評価している。
こういった状況を受け、最高経営責任者(CEO)のChristian Klein氏は戦略の見直しと、態勢の立て直しに踏み切った。同氏はSAPの顧客ベースがCOVID-19のパンデミックによって苦戦を強いられている結果、需要の減少が引き起こされていると述べた。SAPソフトウェアが多くを占めるサプライチェーンはさまざまな混乱の中、その場での対応を強いられてきている。また、出張旅費/経費精算アプリケーションの「SAP Concur」は企業の出張がほとんどなくなった結果、販売規模の低下につながっている。
最高財務責任者(CFO)のLuka Mucic氏は、2020年における同社のクラウド売上高成長率とともに、総売上高と営業利益の目標を縮小したと述べた。さらに、顧客ベースとアプリのクラウドへの移行にさらに注力するため、2023年までは成長率が鈍化するだろうとも述べた。
Mucic氏によると、SAPのクラウド売上高はこれまで、既存のライセンス収入よりも速いペースで増加していたという。そして、今日ではクラウドの売上高がライセンスの売上高を浸食している。その結果、同社は顧客を前払いのソフトウェアライセンスモデルからサブスクリプションモデルへと移行させようとしている。この動きはMicrosoftやAdobeがとった動きとよく似ている。Mucic氏によると、「顧客がライセンスとサポート契約という実績あるモデルからサブスクリプションモデルに移行することで共食い効果が発生するのは間違いない」という。
上の2枚のプレゼンテーションスライドがSAPの株価に大きな影響を与えた。