カスタマーサービスのソフトウェアをSaaS形式で提供する米Zendeskは7月14日~8月8日に米Enterprise Strategy Group(ESG)と共同で顧客体験(CX)の意識を調査。10月28日に結果を発表した。
顧客サービスの運用や改善に関する意思決定権保有者1000人以上(北米=256、欧州=250、アジア=250、ラテンアメリカ=256)の回答から、CX成熟度評価を策定し、CX成熟度を「Starter(スターター)」「Riser(ライザー)」「Champion(チャンピオン)」の3段階に分類した。
米Zendesk 製品担当プレジデント Adrian McDermott氏
Zendesk 製品担当プレジデント Adrian McDermott氏は「チャンピオンと評価された企業は全体の4分の1(24%)にすぎない。日本市場だけ切り出すと、エージェントの効率性が高い、または市場をリードすると回答した企業はわずか14%。今後1年間でCX分野への投資増加を予定する企業は5%だった」と、日本の顧客サービス領域は潜在的可能性があることを指し示した。
顧客サービスの重要性が声高に叫ばれているようになって久しいが、CXの窓口となるウェブサイトやアプリケーションの品質が低いままサービス提供を続ける企業は枚挙に暇がない。
サポート部門や営業部門、顧客エンゲージメント向け顧客情報管理システム(CRM)を提供するZendeskは「セルフサービスのあり方」「メッセージングの捕まえ方」「人工知能(AI)の搭載」「データの扱い」「開発の効率性」と5つの角度から“CXチャンピオンになる方法”を提示した。
セルフサービスで時間短縮
コロナ禍でセルフサービスの重要性は高まっているが、同社が指し示したデータによれば、窓口へ問い合わせる前にウェブサイトで解決策を探す顧客の割合は81%、セルフサービスの導入に伴って短縮された問題解決時間の割合は50~75%という調査結果もある。
McDermott氏は「われわれはネット検索において適切な回答を知るための単語を取捨選択できるトレーニングを受けている。セルフサービスを導入しなければ、顧客の問い合わせに対応するための社内資源は膨大に必要だ。われわれの調査では76%のチャンピオン企業がセルフサービスを提供し、今後は問い合わせチケットが例外処理的な存在になる」とセルフサービスの重要性を強調した。
そのためにMcDermott氏は「優れたコンテンツ戦略が欠かせない。情報提供側がサービスや情報をアップデートし制御することが、CX向上につながる」と語る。
IMはトランザクション型ツールに
もはやビジネスでインスタントメッセンジャー(IM)を使うケースは珍しくない。とあるデータでは全世界のスマートフォンユーザー85%がメッセージアプリケーションを使用しているが、「チャンピオン企業は2.3倍の割合で(IMを)エージェントがシームレスにチャネルを行き来している。弊社製品群の中でも『Chat』の顧客満足度が一番高い」(McDermott氏)
さらにMcDermott氏は「対話側ビジネスもIMがかなえてくれた。もはやIMは単なるチャットツールではなくトランザクション型ツールになりつつある。中国ではWeChat、日本ではLINE for Business。これは世界的潮流だ」とCX向上におけるIMの重要性を強調した。
AIには継続投資の価値
現状のAIは自然言語処理の課題や学習データなどに基づく偏りなど問題を抱えつつも、日進月歩で進化を遂げるITを背景にMcDermott氏は「AIには継続投資の価値がある」と指摘する。
さらにMcDermott氏は「弊社のとある顧客企業がチケット対応可能なチャットボットを導入したところ、コロナ禍で対応頻度は300%増加した。また63%の割合でチャットボットへのメッセージ送信を好む。ストレスレベルが低く、場合によっては効率性も向上する」と具体例を示しながら、AIの活用領域として自動化やレコメンド(推奨)、予測での活用を提案した。