営業やマーケティングといったビジネスチームでSalesforceを導入する企業は多いが、採用管理、人事評価、労務管理といったバックオフィスの領域でSalesforceを活用している企業は少ない。その中でも、クラウド会計ソフトなどを手がけるfreee(品川区、単体従業員数506人)は、バックオフィス部門でもSalesforceを導入。全社的にSalesforceの定着に取組んでいるという。
Salesforce活用ユーザー企業が自社の事例をプレゼンする「SFUG(Salesforce User Group) CUP」の決勝では、抱えていた課題や活用方法などを紹介した。
急成長企業が直面する“ありがちな課題”とは
2012年創業のfreeeは、「スモールビジネスを世界の主役に」というミッションを掲げている。小規模企業や個人事業主向けに金融関連の事務管理ソフトをSaaSモデルで提供するFinTech(フィンテック)企業だ。
freee GYOMUハックエンジニア 田中氏
かねてからfreeeのビジネスチームでは、マーケティング、インサイドセールスやフィールドセールス、顧客情報管理システム(CRM)などでSalesforceを活用していた。さらに、2020年からは採用管理、人事評価、労務管理、サポートといった分野でもSalesforceを活用している。freeeでGYOMUハックエンジニアの田中奈穂子氏は、「もともとバックオフィスにはほかのシステムを採用していたが、現在はすべてSalesforceに移行した」と説明する。
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freeeがバックオフィスにSalesforceを導入した背景には、急成長している企業ならではの課題があった。
たとえば、採用管理では従業員数の増加に伴い、採用に関する分析が難しくなっていた。特に採用チームと労務管理チームのやり取りが煩雑になっていたが、両チームで独自のデータ管理をしていたため、情報共有が一元化できていなかったという。
この課題解決には、Salesforceのレポート機能を活用した。同機能は分析だけでなく、採用に関するステータスが一目で確認できる。そのため、採用チームと労務管理チームで情報が寸断されることもない。
さらに、レポートのダッシュボードではリアルタイムで数字が更新されるので、データのバージョン管理ミスによる“情報のズレ”もなくなった。田中氏は「これにより、HC(Human Capital)計画の一元化が可能になった」と語る。
また、労務管理では、大量のスプレッドシートで情報を保管していたため、複数のツール間で同じ情報を転記する作業が発生していた。こちらでもデータのバージョン管理が徹底されておらず、「どれが最新の正しい情報なのかわからない」「タレントマネジメントができない」という課題に直面していた。
そこでfreeeでは、労務申請の際に利用する従業員のコードに紐づくシステムを利用し、自動で情報が更新される仕組みを構築した。これにより転記の手間がなくなったほか、人事異動の履歴も把握できるようになった。さらに、これまでは2日間を費やしてきた人事評価レポートの作成作業も、「自動化で手間がゼロ」(田中氏)になったという。
一方、人事評価で課題となっていたのが、Salesforce以前に利用していた評価ツールの「使い勝手の悪さ」である。田中氏は「同じ評価ツールの中で、完結したキャリブレーションができなかった。そのため、データの集計と整理、可視化をするだけで、現場にかなりの負荷がかかっていた」と説明する。
この課題もSalesforceに移行したことで、人事評価に関するデータの集計と整理、可視化の簡素化に成功した。その結果、Salesforceだけで人事評価ができるようになり、すべての従業員が自分の目標をSalesforce上で確認できる環境が構築できたという。
ちなみに、freeeではこれらの移行と開発作業をすべて自社で実現した。田中氏は「その期間は約1カ月半だ」と胸を張る。