人材採用や労務管理でも活用--Salesforceを全社で活用するfreeeの秘密 - (page 2)

鈴木恭子

2020-11-09 07:00

標準機能で開発にスピード感を

 田中氏は「短期間で開発を進め、全社員がSalesforceを活用できるようになった背景には、3つの理由がある」と説明する。

 1つ目は、従来からマーケティング、セールス、カスタマーサクセスの各部門でSalesforceの活用実績があり、多くの従業員がその信頼性を享受してきたことだ。

 2つ目は、自社の業務要件に、Salesforceの機能を柔軟に“マッチング”させたこと。

 そして3つ目が、社内に「GYOMUハックチーム」という、社内システム基盤の開発と運輸を一手に担う専任チームを設置したことだ。

 freeeではなるべくSalesforceの標準機能を活用して業務要件を満たすようにしている。田中氏は「最近、ローコードやノーコードといったノンコーディングプログラミングが注目されている。これら(ノンコーディングプログラミング)を活用してできることはたくさんある。だから、本当に開発が必用な場合のみ、『Lightning Web Component』や『(プログラミング言語の)Apex』で開発するようにしている」と説明する。

 さらにfreeeでは今後、Salesforceを会社の基幹システムとして活用していく予定だ。Salesforceでデータを一元管理すれば、たとえば、従業員のライフイベントに伴う雇用形態の変更などがあった場合にも、手続きに手間がかからない。「Salesforceを見れば、従業員はどのような手続き(申請)をすればよいかが一目瞭然」(田中氏)な環境を目指すという。そこで必要になるのが、スピード感のある開発だ。

 田中氏は、「オンプレミス時代の社内システム開発と、フルクラウド時代の社内システム開発は、そのアプローチが異なる」と指摘する。

 フルクラウドで社内システムを運用している場合、自社の業務要件と利用しているSaaSとをマッチングさせる必要がある。田中氏は「感覚としては業務をSaaSに“寄せる”イメージだ。これには業務知識やSaaSの理解、エンジニアリングのノウハウが必要になる。これらが実現できれば業務要件を(SaaSで提供している)標準機能でスピーディに開発できる」と指摘する。

 freeeがSalesforceを社内に定着化する取り組みとして実施しているのが、「専任のメンバーを決める」「勉強会を実施する」「マネージャーの牽引」「データの可視化」だ。特にデータの可視化は、データを活用した「データドリブンセールス」を実現するうえで不可欠だという。

 田中氏は、「メンバーが目標への進捗や評価指標(KPI)を確認できるダッシュボードを作成し、常にSalesforceにアクセスする環境を構築することが大切だ。『Salesforce(の活用)は一日にして成らず』であり、長期的に取り組むことで、(基幹システムとして)完成する」と力説した。

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