日立製作所(日立)は、「ブロックチェーンシステム開発支援サービス」の提供を開始した。
同サービスは、高い改ざん耐性を持つブロックチェーン技術を活用する業務アプリケーションの開発/導入を迅速化する。ブロックチェーン基盤や開発環境、業務テンプレートなど各種機能を整備し、システム基盤の環境提供から、設計コンサルティング、アプリケーションの構築/運用まで、ブロックチェーンのシステム導入を一貫して支援する。
ブロックチェーンシステム開発支援サービスの概要図(出典:日立)
ブロックチェーンシステムでニーズの高いユースケースを汎用化した業務テンプレートと、難易度が高いブロックチェーン特有のコーディングを自動生成できる開発フレームワークを独自に開発しており、ビジネス要件に柔軟かつ迅速に対応できる機能群を整備している。開発フレームワークでは、難易度が高いとされる、ブロックチェーンへの登録/参照処理や、IoTデバイスなどで発生した大量データを送受信するための流量制御、ブロックチェーンのネットワークに参加する企業との台帳設定、ハッシュ化による秘匿化の実施有無などを、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)で容易に定義できる。
ブロックチェーンは成長途上の技術であることから、取り扱いの難易度が高いほか、台帳の保持単位や、データごとの共有/秘匿範囲の設計など、従来のシステム構築にはなかった要素の検討が必要となる。これに対し日立は2019年3月から、マネージド型クラウドサービスとしてブロックチェーン基盤の構築から運用保守まで包括的に支援する「Hitachi Blockchain Service for Hyperledger Fabric」を提供している。ブロックチェーンシステム開発支援サービスでは、Hitachi Blockchain Service for Hyperledger Fabricを活用し、ブロックチェーンシステムにおけるアプリケーション開発の迅速化を図る。
また同サービスでは、日立がこれまで培ったブロックチェーンシステムの開発実績を基に、ユースケースを「証跡共有型」「価値流通型」「自動執行型」の3つに分類し、各類型に対応する開発部品群を整備している。
証跡共有型は、企業間取引において「誰がいつどのような行為をしたのか」を電子的に記録/保証する、ブロックチェーンの代表的なユースケース。その中でも利用ニーズが高い「電子署名」と「受発注情報のトレーサビリティー」向けの業務テンプレートを用意するほか、専門性が求められるブロックチェーンへのアクセス処理をGUIの定義のみで自動生成できる開発フレームワークを提供する。
また、デジタル通貨やデジタル債権などの所有/利用権の取引管理を目的とする、価値流通型のユースケース向けには、「トークン」機能を効率的に開発/運用するフレームワークを開発し、2020年度中の提供開始を予定している。
自動執行型は、ブロックチェーン上であらかじめ設定されたルールに従って、取引を自動実行するスマートコントラクトの仕組みを利用するユースケースで、ユーザーごとの固有の取引実行の条件などに応じて開発を支援する。
これらの各類型の開発部品群を組み合わせることで、複雑なユースケースにも柔軟に対応できるようになるという。例えば、証跡共有型と価値流通型の開発部品群を組み合わせ、物品貸借において契約署名の電子化と貸借状況の管理を連動することが可能になる。また、証跡共有型のサプライチェーンテンプレートと自動執行型のスマートコントラクトの仕組みを組み合わせることで、サプライチェーンにおける受発注のトレーサビリティを強化するとともに、支払いなどの決済を確実に自動化することが可能となる。同サービスの利用価格は、コンサルティング、システム構築、環境提供すべて個別見積もり。