アリババ傘下アント、上海と香港のIPO延期

Campbell Kwan (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-11-04 18:10

 上海証券取引所は、今週予定されていたアントグループの新規株式公開(IPO)を延期すると発表した。アントグループの経営幹部との会談で、同社が規制要件を満たしていない可能性があることが明らかになったとしている。

Ant Group
提供:Ant Group

 同社の上海市場でのIPOが一時的に差し止められたのは、現地時間11月3日夜、中国の規制当局の担当者が馬雲(Jack Ma)氏、井賢棟(Eric Jing)氏、胡暁明(Simon Hu)氏を含む同社の経営幹部と会談した後のことだ。当局の担当者は、会談の中で、「フィンテック規制環境の最近の変化」により、上海市場での上場は規制要件や情報開示要件を満たしていない可能性があると判断した。

 この事態を受け、アントグループは5日に予定されていた香港市場での上場も延期したと、証券取引所が公開した通知の中で明らかにした。

 同社は、「アントグループは本日、上海証券取引所から、当社の上海証券取引所へのA株上場計画が一時差し止めになると通知された。それを受けて、当社は、香港証券取引所で同時にH株を上場する計画についても延期することを決定した」と述べている。

 同社は声明の中で、上場の延期によって投資家に迷惑をかけたことを謝罪した。

 アントグループは、「当社は今後、上海証券取引所および関係する規制当局と緊密に連絡を取り、当社の株式公開と上場プロセスに関する今後の進展状況についての通知を待って、適時公表していく」と述べている。

 「Alipay」を運営しているアントグループは、香港証券取引所でのIPO価格を80香港ドル、上海証券取引所での公募価格を68.8元(いずれも約1080円)に設定していた。

 The Wall Street Journalによれば、これらの株価を元に計算すると、同社は両取引所でそれぞれ172億ドル(約1兆8000億円)の資金を調達する見通しだった。計344億ドル(約3兆6000億円)の調達に成功していれば、史上最大規模のIPOになっていた可能性があるという。

 アントグループは7月にIPO手続きを開始したが、当時の同社は、上海と香港で同時に上場することによって、国内の需要を押し上げ、パートナーとともにグローバル市場でサービスを拡大する後押しになると語っていた。

 アントグループと同社の株式の33%を保有する阿里巴巴集団(アリババ)は、さまざまな取り組みを通じて、同社のグローバル市場における存在感を拡大しようとしてきた。取り組みの中には、Alipayのプラットフォームに中国全土で4000万のサービスプロバイダーのデジタル変革を支援する3カ年計画も含まれる。

 2019年11月には、外国からの訪問者もAlipayを利用することが可能になった。これによって初めて、中国の住民以外が商品やサービスの決済にAlipayでモバイル決済を使用できるようになった。それまで、Alipayを使用するためには、中国国内に銀行口座を持っている必要があった。

 Alipayの利用者は12億人を超えており、タクシーや、ホテルの部屋予約、映画のチケットなど、さまざまなサービスの支払いをアプリで行うことができる。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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