今、中小企業に求められるデジタル変革
DXが進めば、これらの課題は解決に向かいます。業務を見直しデジタル化できれば、これまでよりも少ないリソースで成果を出せるようになり、業績が上がります。売り上げや利益の向上ができれば、その分新しい投資に回せるようになり、さらに生産性が上げられます。業務の標準化、サービスや製品、顧客対応の改善、採用の強化、従業員の給与向上などへリソースを投入できるのです。
では、DXはどのように推進すればいいのでしょうか? 一番重要なことは、経営者がDXの必要性を理解し、自ら動くことです。中小企業では特に、経営者がDXを推進しなければ組織は変わりません。部下が経営者を動かすのは難しく、むしろ外部のコンサルタントやベンダーなどにDXの重要性を問いてもらい、経営者が納得し腹をくくる必要があります。
経営者の覚悟が決まったら、自社の現状を定量的に評価し、将来的にどのようになりたいのか目標を具体的に定めます。現状の認識と理想の姿の設定です。
現状の認識については、経営状況から判断します。月、年の売り上げの推移、製品やサービス別の売り上げの推移、売上構成比、売り上げに対する従業員の生産性、取引先ごとの売上金額、見込み案件の数、売上予測などの数字を集めて、定量的に把握できるようにしていきます。
続いて、これらの数字をどう変えていきたいのか、いつまでに自分たちの組織がどうなりたいのかを目標とする姿を決めます。目標がわからない場合は、Salesforceの事例など他社の取り組みをみてください。多様な業界、業種のDXで組織変革した事例から、自社の業界、規模に近い事例を見つけられるでしょう。
現実と理想がわかれば、理想にたどり着くまでにどのくらいのギャップがあるのかがわかりますから、そのギャップを埋めていくための計画を、期限を区切って立てていきます。
デジタル変革は、経営者のコミットが必要ですが、加えて組織改革やデジタル化などの経験がある人材がいた方がスムーズに進みます。新しく人材を採用してもいいですし、難しければSalesforceのようなベンダーに相談してください。相談しながら、経営者自らが率先して動き、ノウハウを身につければ、その後社内人材を育成していくこともできます。
経営者が自ら動き、改革をしていけば、社員も自分のミッションを達成するため、自分たちの頭で考えて動くようになるはずです。そこまできたら、DXはほぼ完成に近いです。これが、冒頭でも述べたような組織の変革、業務の変革、文化の変革になるのです。
(第2回は11月下旬にて掲載予定)

- 千葉 弘崇(ちば ひろたか)
- セールスフォース・ドットコム
- 専務執行役員 コマーシャル営業
- 1995年に明治大学経営学部卒業後、外資系ハードウエアメーカー、外資系コンサルティングファームを経て、2008年4月にセールスフォース・ドットコム入社、コマーシャル営業本部営業マネージャーに就任。2018年に専務執行役員に就任。