IT調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)は11月12日、国内企業のIT投資動向を把握する年次調査「IT投資動向調査 2021」の結果を発表した。20回目となる今回調査は8月21日~9月1日に行い、定点観測とするIT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲の動向に加え、新型コロナウイルス感染症による各種影響も対象とした。2667件の有効回答を得ている。
これによると、2020年度のIT予算額を前年度から「増額」とした企業は36%で、前年調査時の2020年度予想から微増した。一方で「減額」とした企業は15%あり、前年調査時の予想からほぼ倍増した。同社がIT予算の増減傾向を指数化した「IT投資インデックス」では、2020年度の実績値は「1.93」で、2019年度の「2.62」から減少し2015年度以来5年ぶりに2ポイント台を下回った。プラス傾向は維持されているものの、2021年度は2020年度実績値をさらに下回る「1.72」と予想されている。
IT投資インデックスの推移
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する部門の設置率は、前回調査から7ポイント増加して67%に達した。形態別では、既存部門が掛け持ちで担当する割合が28%で最も多いが、専任部門の設置も3ポイント増の18%に達した。同社では、DXに積極的に取り組もうとする企業の意識が高まっていることがうかがえる、と分析する。
デジタル変革の専任部門の設置状況の変化(2019年調査/2020年調査)
また、DX推進体制とIT投資インデックスの相関性を見ると、DX推進体制を持つ企業はIT投資インデックスが軒並みプラス水準だったのに対し、持たないあるいは不明とした企業はマイナス水準で、明暗が分かれたとする。特に、専任部門の設置する企業のIT投資インデックスは、2020年度が「3.23」、2021年度予想も「3.22」と同じ増額の勢いを示し、コロナ禍でも積極的なIT投資を継続する姿勢が見られるとしている。
IT投資インデックス(2020〜2021年度予想)︓デジタル変革の専任部門の設置状況別
自社のIT戦略の遂行(デジタル化の進展)に対するコロナ禍の影響については、「加速(大いに加速、やや加速の合計)」とした企業が50%、「変わらない」が31%、「減速(大いに減速、やや減速の合計)」が20%だった。IT投資インデックスとの相関性では、「大いに加速」と答えた企業では4ポイント以上のプラス、「大いに減速」とした企業では5ポイント近いマイナスと二極化した。
IT投資インデックス(2020〜2021年度予想):コロナ禍によるIT戦略遂行への影響認識別
調査結果についてシニア・アナリストの三浦竜樹氏は、「コロナ禍の影響もありIT予算は2年連続で減速傾向にあるが、2021年度も増加基調が維持される見込みが示された。企業は業務とビジネスの両面でDX推進に必要なIT投資にリソースを振り向け、早期にデジタル化を進め、売り上げの回復・増大につなげていくことが望まれる」とコメントしている。