シスコシステムズは11月12日、5G(第5世代移動体通信システム)の価値創出を推進し、エンドツーエンドの5Gネットワーク環境で実証実験が可能となる「5Gショーケース」の運用を開始したと発表した。

シスコシステムズ 副社長 情報通信産業事業統括の中川いち朗氏
5Gショーケースは、通信事業者、企業、公共機関、エコパートナーや業界アプリケーションとのオープンな協同イノベーション環境を提供し、エンドツーエンドの環境下でアプリケーション開発とテストを実施するための施設となる。通信事業者、企業ユーザ、エコパートナーとともに5Gを活用したあらゆる業界のビジネスに大きな革新をもたらすユースケースを創出し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を支援することを目指す。
同社 副社長 情報通信産業事業統括の中川いち朗氏は、2021年度の重点戦略として掲げた6つの注力分野の中でも、「5Gインフラストラクチャー」は他の戦略エリアを支える重要な存在と位置付けられていることを改めて強調した。その上で「5G時代のモバイルネットワークでは、4G以前の“接続性”を中心とした機能提供から、デジタルとリアルが融合した新しいビジネスの価値を創造するサービスを提供するものとして期待されている」とし、「4Gへの期待とは一線を画すもの」だと語った。

同社の2021年度の重点戦略

5Gへの期待。4Gまでは接続性の提供を主としていたが、5Gはさらにデジタル連携に寄る新たなサービスの創造が期待される
さらに、今回の5Gショーケース設立の背景として「企業や業界を超えたデジタルの連携、すなわち通信事業者側と企業側のネットワークがエンドツーエンドでセキュアに連携され、運用が自動化・可視化される、こういったものが実現しなければならない。そのためには、双方のネットワークのアーキテクチャーが変革しなくてはならない」との考えが一致した一方で、現実には「通信事業者と企業のネットワークが融合した環境」というものはまだ存在しないことから、「通信事業者の新しい5Gのアーキテクチャーと、ニューノーマルに向けた企業の新しいネットワーク、これをエンドツーエンドで連携した、おそらく日本初のショーケースを東京本社に設立」するに至ったと説明した。
同社の立場については、「通信事業者と企業のネットワークの両方を長年にわたって支援してきた当社だからこそできることと自負している」としたが、同時に「エンドツーエンドの環境実現と、実際のユースケースの創造は、シスコだけで支援できるとは思っていない」とし、「5GによるDXをリアルに加速していくためには企業、通信事業者、パートナーに加えて、各種テクノロジーカンパニーの支援を受けてこの環境を創り上げている。5Gショーケースはこうした共創、つまり“共に創り上げる”場を提供したものであり、決してシスコのソリューションをショーアップする場ではない」と明言した。

5Gショーケースの開設趣意

5Gショーケースの価値
なお、5Gショーケースでは5Gネットワーク/企業ネットワークともに本来必要とされる構成機器を全て実際に準備し、省略なしの実証環境を準備した点が特徴となる。このため、各種サービスやアプリケーションの検証も、リアルな環境に近い環境で検証を行えるという。