富士通は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)から産官学における人工知能(AI)研究開発を加速させるスーパーコンピューターシステム「AI橋渡しグリーンクラウド基盤」を受注した。
同基盤は、富士通が受注/開発し、2018年8月1日から運用している「AI橋渡しクラウド基盤(ABCI)」を増強する目的で構築され、ABCIの基本的な構成を踏襲しつつ、より高性能な計算システムや大容量ストレージシステムなどを組み合わせたものだという。
ABCIは構築当時、世界最高水準の機械学習処理能力、高性能計算能力、省電力性を備えたAI用途向けのクラウド基盤として、運用開始以降、AI関連のスタートアップ企業から総合電機メーカーまで、1000人以上の利用者が最先端技術を活用したAIの研究開発を行ってきた。しかし近年の産官学におけるAI研究開発需要の急速な高まりを受け、産総研はAI橋渡しグリーンクラウド基盤の構築を決定した。
同基盤はアルゴリズム、ビッグデータ、計算能力の協調による高度なAI処理を可能とするシステムとして、産総研の柏センターAIデータセンター棟に増設され、2021年度から運用を開始する予定だ。
AI橋渡しグリーンクラウド基盤の主な構成(出典:富士通)
AI橋渡しグリーンクラウド基盤の最大の特徴は、最新サーバー120台で構成されるAI用途向け大規模クラウド基盤だという。1ノード当たり8基のハイエンドGPU「NVIDIA A100」や、2基のCPU(第3世代インテル Xeon スケーラブルプロセッサー:開発コード名 Ice lake)を搭載した「FUJITSU Server PRIMERGY GX2570」の次期モデル120台が用いられる。
FUJITSU Server PRIMERGY GX2570の次期モデル(出典:富士通)
これにより、ABCIとAI橋渡しグリーンクラウド基盤の合算で、半精度浮動小数点演算の理論ピーク性能は850ペタフロップス、倍精度浮動小数点演算では56.7ペタフロップスとなる見込み。これは2020年6月の最新のスパコンランキングTOP500リストの国内2位、世界6位に相当するものだという。
またAI橋渡しグリーンクラウド基盤に搭載する11.2ペタバイトの大容量ストレージシステムを、すでに稼動しているABCIのストレージシステムと連携させ、相互アクセスを可能にすることで、ABCIと同基盤の一体運用を可能にしている。