前回は、レガシーなユーザーアプリケーション、古い使い方などのモダナイゼーションを阻む障壁を分析し、乗り越えなくてはいけない条件を提示した。今回はそれらを乗り越える手法や方向性を示し、IBM i(AS/400)のモダナイゼーションにおける「新しい選択肢」を提案したい。
モダナイゼーション計画の初期段階に必須な要素
前回挙げたモダナイゼーションを阻む要因は以下である。
- サステナブル(持続可能)なレガシー
- レガシーボリューム
- レガシーの地層構造
- レガシーのダブルロック
第2回ではモダナイゼーションの失敗原因の例を紹介したが、レガシーの詳細な状況を掴まず、ベンダー側の機能面でモダナイゼーションする点は共通と言えるだろう。手法であるべきコンバージョンやパッケージ化がいつの間にか目的とすり替わっているのである。
モダナイゼーションの目的は、属人化やブラックボックスの解消、若手社員でも持続維持なシステム、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対応できる柔軟なシステムへの変革などである。これらは長い歴史を持つIBM i(AS/400)のアプリケーションに対しては、短中長期といった期間別で計画を行う必要がある。
このためにもまずは、従来のモダナイゼーション計画の初期段階に以下を加えるべきである。
- レガシーアプリケーションの可視化
- レガシーアプリケーションの棚卸し
- レガシーアプリケーションの評価
目的達成のためには、今の状況の把握、実現性のある手法の選択がベストだろう。
段階的モダナイゼーションのすすめ
レガシーアプリケーションを棚卸し、評価すると、ボリュームや地層構造が明らかになる。複雑で莫大な量に前途が閉ざされるような感を持つユーザーもいるかもしれない。だが、これらは段階的モダナイゼーションで解決することができる。
段階1:情報システム組織の環境モダナイゼーション
前述のレガシーアプリケーションに対して解析ツールを導入し、可視化、棚卸し、評価ができる環境を整備する。前述の現状を把握するという目的のほか、既存作業の効率化、若手社員を含む誰が調査しても同じ結果を迅速に得られるという平準化により、現時点での属人化問題の解消を狙うものである。
また、同時に既存アプリケーションに関わる時間が削減されるため、前向きなモダナイゼーションにかける時間を作り出すことができる。