2020年は、新型コロナウイルス感染症の大規模流行(パンデミック)によって世界に混乱がもたらされ、企業もそれまでのビジネスを持続させることが困難な状況に置かれている。ガートナー ジャパンが11月17~19日にオンラインで開催している「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」の初日の基調講演では、首脳陣がCIO(最高情報責任者)に「コンポーザブルビジネス」への取り組みを提案。コンポーザブルビジネスは、困難に直面してもビジネスを俊敏に回復させる手立てになると説いた。
コンポーザブルビジネスは、同社が先だって発表した「2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の1つに挙げられている。コロナ禍の以前、多くの企業・組織はビジネスの効率性を重視したプロセスを築いてきたが、突然のパンデミックによってビジネス環境が破壊され、従前のビジネスプロセスに縛られた企業・組織は、その変化に対応できず停滞あるいは消滅の危機に直面する。コロナ禍に即した新しいビジネスとプロセスの再構築が急務であり、そのキーワードが「コンポーザブル(選択や組み立てができること)」だという。
講演の冒頭で米Gartner ディスティングイッシュド バイスプレジデント アナリストのDaryl Plummer氏は、CIOこそがテクノロジーとビジネスを武器に「コンポーザブルビジネス」を実現していく立役者になるとし、「インスピレーションを発揮してほしい」と語りかけた。
バイスプレジデント フェローのTina Nunno氏は、企業・組織が感染対策として一斉導入した在宅勤務がビジネスの成長性にとって有効かどうかは別としつつ、「2019年まではオフィスでPCを利用して働くスタイルが常識だった状況が一変しても、ウェブ会議やオンラインコラボレーションを利用してビジネスを継続できることを多くの企業・組織が体験している」と述べた。クラウドサービスなどコロナ禍で成長している分野はあるものの、多くのビジネスは困難に直面しており、CIOはIT予算の執行に大きな制約を受けている。「それでもCIOはビジネスの継続性を担う立場として、デジタルを推進していくチャンスが与えられ幸運だ。何をすべきか、世界に目を向けてほしい」(Nunno氏)
ディスティングイッシュド バイスプレジデント アナリストのDonald Scheibenreif氏は、コンポーザブルビジネスには「モジュール化」「オーケストレーション」「自律」「検出」の4つの構成要素があるとした。
「コンポーザブルビジネス」のアーキテクチャー、出典:ガートナー(2020年11月)
コロナ禍がもたらす激しい変化で先行きを見通すことは困難を極めるが、Scheibenreif氏は、顧客や従業員、株主、そして社会が求めているものを「検出」すべきだと話す。「過去10年において企業や組織は、特に顧客の声に耳を傾けてきたが、2020年の現在は“公平”が求められている。ソーシャルメディアの声からユーザーの感情を探るようなことを既に実行している。そうした取り組みを常に出発点としていくべきだ」(Scheibenreif氏)
CIOは、企業・組織を取り巻くあらゆる関係者の声からなすべきことを「検出」する。検出によってビジネスを継続していくための要素が「モジュール化」「オーケストレーション」「自律」になる。抽象的だが、Plummer氏はコンテナーなどのテクノロジーを活用したITシステムのアーキテクチャーを例に挙げる。ビジネスにおいても必要とされる機能(人材や体制なども意味するようだ)をモジュールとして備えておき、それぞれのモジュールが自律していながらも、企業・組織全体として機能するようにオーケストレーションさせていく能力が必要になる。「原則とモジュールを基本とする。いつ、いかなる変化が生じてもスピード感を持って対応できる柔軟性と再現性を手にする。これが生命線になる」(Plummer氏)