実は、平成30年度の税制改正では、各種証明書の電子提出・電子保管が認められただけで義務化ではないため、証明書のデータを提供するか否かは保険会社や金融機関の個別の判断に委ねられています。社員が加入しているすべての保険会社や金融機関が、証明書データの提供を行われなければ、年末調整の電子化を実現することはできません。
年末調整電子化実現に向けて声を上げ続ける必要性
証明書のデータ提供を行う保険会社や金融機関が少ないこと以外にも、年末調整電子化にはいくつかハードルがあります(マイナポータル経由での取得にはマイナンバーカードが必要だがカードの取得率が低い、マイナポータル側のシステム改修が遅れている、など)。
しかし、これまで見てきたように、年末調整電子化が実現すれば大幅な業務改善効果が期待できるため、このまま中途半端な状態で終わらせてしまう訳にはいきません。
今年の導入が難しくても、少しでも早く電子化を実現するためには、その必要性を社会全体に伝えていく必要があります。Works Human Intelligenceでは、2020年の年末調整に向け、できる範囲で電子化を実施することにしました。対象の生命保険に加入している社員に協力を依頼し、証明書データを取得し、システムに取り込んでいます。実施を経て見えてきたメリットとデメリットをまとめて発信するとともに、政府・行政や金融機関に対して働きかけを行う予定です。
実現すれば人事部門の大幅な業務効率化が期待される年末調整電子化。地道ではありますが、声を上げ続けることが、実現への近道になると考えています。
- 羽鳥智喜(はとり・ともよし)
- Works Human Intelligence 渉外担当
- 大学院修了後、2011年ワークスアプリケーションズへ入社。マイナンバー対応をきっかけに、政府や行政とのリレーション構築を開始。就労証明書の様式統一では、大手法人の人事部門の意見を取り纏め、規制改革推進会議行政手続部会に複数回出席し情報を発信した。現在は渉外担当として、大手法人の人事部門と政府や行政機関の橋渡し役を務める