マイクロソフトが日本向けに推奨するクラウドサービス機能の変化

阿久津良和

2020-12-02 06:00

 日本マイクロソフトは、9月に開催した技術カンファレンス「Microsoft Ignite 2020」での発表情報を日本向けに発信する特設サイト「Microsoft Ignite Recap Day 2020」を公開、これに合わせてMicrosoft Azureに関するメディア勉強会を開催した。

 冒頭で同社Azureビジネス本部 クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの廣瀬一海氏は、同社サービスの強みとして、「クラウド業界は各社が技術を競う世界。(他社が類似機能を提供をし始めた場合)業界としての方向性が一致している」と述べた。

日本マイクロソフト Azureビジネス本部 クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの廣瀬一海氏
日本マイクロソフト Azureビジネス本部 クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの廣瀬一海氏

 Microsoft Igniteでは例年膨大な情報が発表される。このため特設サイトや今回の勉強会などを通じ、「一押しの新機能をピックアップ」して発信するという。Igniteでは、画像分析やOCR(光学文字認識)といった機能を提供する「Computer Vision」のAPIがバージョン3.1にアップデートされ「Computer Vision Spatial Analysis(空間分析)」のプレビュー版として公開されたほか、「Read API 3.1」が一般提供を始めた。

 Computer Vision Spatial Analysisは、人と人の間隔や待機時間といった物理空間を分析する機能。リアルタイムに動画を分析して映像内に映し出された人を検出し、例えば、「People Countingモード」では人数をカウントする。「Social Distancingモード」ではコロナ禍対策で重要な密状態を確認する。「Entry/Exitモード」では指定範囲内の入退出をチェックし、店舗などでの活用が期待できる。コンテナー形式で提供され、Azure Stack Edgeや自社運用のエッジコンピューティング環境でも実行できる。

Computer Vision Spatial Analysisの空間分析機能。用途に応じた複数の分析モードを用意する
Computer Vision Spatial Analysisの空間分析機能。用途に応じた複数の分析モードを用意する

 一方のRead APIは、クラウドサービス型のOCR機能として以前から提供されていたが、今回のバージョン3.1で日本語を新たにサポートし、9言語に対応した。日本語と英語、日本語と簡体字中国語など複数言語が混在した画像の文字認識も行える。さらに、文字が手書きか印刷文字かを判別する信頼度スコアなども備えた。Computer Vision Spatial Analysisと同様にコンテナーで提供され、クラウド、オンプレミスいずれの環境でも利用できる。

Read APIによる文字検出。駅構内の案内表を画像として与えると、看板にある日本語や英語を検出している
Read APIによる文字検出。駅構内の案内表を画像として与えると、看板にある日本語や英語を検出している

 Microsoft Teamsのコミュニケーション機能をユーザー自前のソリューションに追加できる「Azure Communication Service」のプレビュー版も取り上げられた。同サービスのSDKは、REST APIやJavaScript、.NET、Java、Python、クライアントSDKもHTML5やJavaScript、iOS(Object-C、Swift)、Android(Java)をサポートする。遠隔の顧客対応や遠隔医療などへの利用が期待できる。

 また、Azure Arcも紹介。Ignite 2019で発表され、ハイブリッド/マルチクラウドに展開したKubernetes環境のセキュリティ管理や統合資産管理などを実現するソリューションだが、今回は「Azure Kubernetes Service(AKS)、AWS Elastic Kubernetes Service(EKS)、Google Cloud Kubernetes Engine(GKE)や、Azureの仮想マシンに展開したSQL Managed InstanceおよびPostgreSQL Hyperscaleのコンテナーを管理する「Azure Arc Enabled data Services」のプレビューと、Kubernetesクラスターへの接続や構成を行うAzure Arc enabled Kubernetesのプレビューが登場した。CNCF(Cloud Native Computing Foundation)認定の標準APIを利用するため、Red Hat OpenShiftなどにも利用できる。

 衛星の通信と制御を行う「Azure Orbital」は、衛星と地上局を無線周波数信号を用いてMicrosoft Azureを接続し、衛星が撮影したVRT(VITA Radio Transport)形式の衛星画像データ(VITA-49)の取得から、Azure Machine Learningなどによる機械学習の自動化が行える。また、海上船舶やネットワーク環境がない地域でも衛星通信を利用して、インターネット接続環境の提供を実現する。

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