コロナ禍はこれまで進んでいたさまざまなトレンドを加速した。分散台帳技術(DLT、ブロックチェーンとも呼ばれる)にとっては、2020年は再評価の年になった。現実的で実用的なアプローチを選ぶ取り組みが増える一方で、純粋な(事業とは別に独立して進められる)研究開発プロジェクトの予算獲得が難しくなる傾向は、以前からあった。
そこに新型コロナウイルス感染症が登場したことで状況は急速に動いた。2020年は純粋に実験的で投機的なプロジェクトの予算はカットされた。また長期にわたる戦略的なプロジェクト、特に市場構造や規制の変化を必要とするプロジェクトのほとんどはスケジュールが延期された。
その一方で、明確なメリットがあるプロジェクトは、継続されているだけでなくペースも加速している。また、コロナ禍が浮き彫りにしたサプライチェーンの問題の部分的な解決に役立つネットワークへの参加に関心を持つ企業も増加傾向にある。
Forrester Researchは2021年のブロックチェーン業界に関して、次のような予想を立てている。
- 世界的にはプロジェクトの30%が本番運用に入る。この数字には、前述のようにプロジェクトへのアプローチが現実的になっていることや、技術が成熟していることだけでなく、コロナ禍を受けて、短期的に予測可能なメリットが得られるプロジェクトが加速していることや、その種のプロジェクトの立ち上げが増えていることが反映されている。試験段階から本番段階に移行するネットワークの大半は、エンタープライズブロックチェーンのプラットフォームで運用されることになるだろう。
- 引き続き許可型のブロックチェーンが主流を占める。企業のITリーダーの多くが、企業の文脈でパブリックブロックチェーンが果たす役割について長期的に検討することを受け入れるようになってきているが、2020年の夏に報道された分散型金融(DeFi)に関する一連の問題が、再びこの議論に蓋をしてしまった。再び暗号資産の無法地帯的な側面と結び付けられてしまったことで、コンプライアンスやリスクを意識するリーダーは、パブリックブロックチェーンから距離を取っている。このため、技術的な側面については強く支持している人であっても、この話題を続けたり、取り上げたりすることが難しくなっている。
- 中国が最も大きく前進する。中国政府の取り組みである「新しいインフラ」は、ブロックチェーンを同国のデジタルインフラの重要な一部として位置付けている。中国政府は2021年に多くの省であらゆる分野にわたって投資を進め、多くのシステムが本番運用に入るだろう。中国の「Blockchain Service Network」を世界的な公共インフラに押し上げようという同国の目論見は、現在の地政学的な状況の中では大きく前進することはない。一方で、欧州の「European Blockchain Services Infrastructure」(EBSI)も同様の大胆なミッションを掲げている。しかし、調達プロセスが複雑で、利害関係の対立も存在することから、パイロットプロジェクトの形では若干の進展があるものの、大きなブレークスルーは期待できないだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。