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顧客志向で切り拓くCOVID-19時代の変革ジャーニー

Salesforce・PwC対談--「Trailblazer」に学ぶカスタマーサクセスの新しいかたち

鈴木雅則,坂内明子,武藤隆是,中川智帆 (セールスフォース・ドットコム/PwCコンサルティング)

2020-12-14 06:00

 「カスタマーサクセス」という概念の生みの親であり、顧客関係管理(CRM)のクラウドサービスを中心に日本でも成長を続けるセールスフォース・ドットコム。常務 執行役員 人事本部長の鈴木雅則氏、カスタマーサクセス統括本部 サクセスマネジメント部長の坂内明子氏を招き、PwCの武藤隆是氏と中川智帆氏(以下敬称略)と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による不確実性が一層高まる状況下におけるカスタマーサクセスの今と今後の可能性を議論した。

カスタマーサクセス誕生の背景とセールスフォース・ドットコムが目指す姿

武藤:近年、日本でもサブスクリプションモデルの製品やサービスを提供しているIT企業を中心に、「カスタマーサクセス」というコンセプトを取り入れようとする動きが活発化しています。カスタマーサクセスという言葉、組織を生み出したのがセールスフォース・ドットコムだと言われていますが、実際にカスタマーサクセスの取り組みはどのように始まったのでしょうか。

坂内:カスタマーサクセスというコンセプト自体を唱え始めたのは、2000年初頭だったと思います。カスタマーサクセスという部署ができたのは、確かグローバルでは2003年頃、日本では2005年ですね。

中川:そんな以前から着手せねばならなかったのは、何か理由があるのでしょうか。

坂内:クライアントと顧客の関係構築をサポートすることがわれわれのビジネスの根幹です。実際、営業支援ツール(SFA)の提供から事業をスタートしましたが、ニューヨーク証券取引所に上場した際には、ティッカーシンボルを「CRM」と登録しています。その思いは今もずっと変わらずにあります。

 加えて、われわれはお客さまに継続的にシステムをご利用いただかないとビジネスが成り立たないサブスクリプションモデルを採用しています。例えば、契約更新率が年90%ということは、毎年10%のお客さまが解約されることになり、10年でお客さまがいなくなってしまうことになります。「お客さまの成功がない限り、私たちの成功はない」。だからこそ、机上の空論に終わらず、現在まで継続して全社で取り組めているのだと思います。

武藤:顧客の成功がセールスフォース・ドットコムの未来の売り上げを作る、ということですね。

 2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で人々の働き方、食べ方、コミュニケーション、学び方、遊び方など、さまざまな行動が加速度的に変化しています。PwCが行った世界の消費者意識調査(PDF)でも、その変化は顕著でした。この新しい世界が顧客との全てのタッチポイントにどのように影響するかを理解するにも、「カスタマーサクセス」を軸において考えるのは重要だと感じます。デジタルのタッチポイントが増え、ユーザーの満足度に関する情報が出回る時代ですから、企業側の論理とは異なる、「顧客とともに成長する」という考え方を根底に持つビジネスは、今後さらに支持されていきそうですね。

世界の消費者意識調査2020
世界の消費者意識調査2020

 とはいえ、「カスタマーサクセス」という言葉が世の中に浸透していない中で、その部門を立ち上げるというのはかなり苦労があったのではないでしょうか。

坂内:日本では上司と私の2人チームでスタートし、最初は手探りでした。社内の理解もまだ乏しく、営業からサポートの連絡を受けて訪問すると、解約が決まっていて手の打ちようがないということも多かったですね。

 場当たり的な対応ばかりしていた頃を第1フェーズとすると、次のフェーズでは顧客のターゲティングや解約の分析を行い、能動的にアプローチするようにしました。第3フェーズでは、情報やノウハウが集まり、お客さまの状況を俯瞰的にデータベース上で確認できるようにしました。そして15年経った今の第4フェーズは、契約直後から「いつ、何をすれば全ての顧客が常に万全な状態でSalesforceを使えるか」という全体設計をすることができるようになりました。

中川:15年、と言うのは簡単ですが、長い時間ですね。道半ばで終わらないのは、ビジネスモデルとカスタマーサクセスのコンセプトが直結しているからでしょうか。

坂内:加えて、経営層が啓蒙(けいもう)に積極的だったことも大きいですね。ただ、最初から社内の各部門、現場レベルまで同じ認識で動くことができていたわけではありません。よく分からないものに抵抗感を覚える方もいますし、まず「われわれは何のために、何をする部門なのか」というところから、社内にも、そしてお客さまにも分かっていただけるよう手間を惜しまず活動しました。

 草の根運動に加えて、各部門と交渉・調整できる、社内から信頼されている人間をリーダーにするというのも重要なポイントでした。成功のために、社内でプレゼンスを発揮し、他部門と対等にコミュニケーションすることは欠かせません。他社の方々とカスタマーサクセス部門について会話すると、立ち上げ時に元トップ営業を部門長にするといった策をとる企業もあります。

武藤:営業の現場や担当者自身の心情を熟知されている方だと、社内調整でも顧客の現場でも連携がスムーズにできそうですね。そのような人事異動を決定するには経営側に強い意志が必要でしょうが、成功するには、型の模倣だけではなく、経営層のコミットが必須だとよく分かりました。

鈴木:セールスフォース・ドットコムには「V2MOM」という独自の目標管理手法があります。Vision(ビジョン)、Values(価値)、Methods(方法)、Obstacles(障害)、Measures(基準)という5つの頭文字からなる言葉ですが、全社員が毎年V2MOMを定め、社内のソーシャルプラットフォームで全社員に内容と進捗(しんちょく)を公開しています。会長兼CEO(最高経営責任者)のMarc Benioffは、自身のV2MOMにおいて売り上げよりもカスタマーサクセスを上位目標として設定しています。こういった経営層のコミット、ビジョンの明確な言語化も効果があったと思います。

セールスフォース・ドットコムの「V2MOM」
セールスフォース・ドットコムの「V2MOM」

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