コロナ禍で加速--働き方の多様化で変化する、労働の意味と組織の存在意義 - (page 2)

阿久津良和

2020-12-08 06:45

 長沼氏も「(今の仕事や働き方に満足しているか、の調査は)バイアスがかかりすぎている。たとえば今の収入で満足しているか、と問われて『満足』と答える人はいない」と指摘した。

 日経HRの「ウィズコロナ時代の転職意識調査」の「この先も在宅勤務を希望するか」との問いには、28%が「コロナ禍収束まで望む」、60%が「コロナ禍と関係なく望む」、12%が「望まない」と答え、88%がリモートワークを希望している。

 NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(品川区)の「テレワークと社会満足度に関する調査」によれば、リモートワークの利点として、51%が「業務だけに集中できる」、43%が「無駄な会議が減った」、38%が「余計な仕事を振られなくなった」、29%が「ウェブ会議で移動時間が減った」、25%が「他人の面倒を見ることが減った」と回答している。

 一方でリモートワークの欠点として、41%が「仕事のモチベーション低下」、38%が「文章で伝えるのに時間がかかる」、30%が「返事待ちで(時間の)ロスが発生する」、29%が「業務フローが不明確でいちいち確認が必要」、23%が「コミュニケーションが減る/仕事が振りにくい」と回答した。

 『月刊総務』の「モチベーションに関する調査」によれば、リモートワークによる機会減少のモチベーション影響度は、82.6%が「影響がある」、17.6%が「影響がない」と回答。さらに「社内のエンゲージメントが低下しているか」の問いには、7.1%が「とても低下している」、88.6%が「やや低下している」と約96%が低下を実感している。

 これらの調査結果について以下のようにコメントしている。

 にしゃんた氏「うちの大学はリモート授業から対面授業に戻し、残念に思っている。(教師と生徒、もしくは生徒同士が)一度対面で会っていれば、(リモート授業も)うまくいく。だが、初っ端からオンラインでつなげようとするとうまくいかない。ただ、(リモートや対面など)選択肢が増えたことはラッキーだ」

広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授 長沼毅氏
広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授 長沼毅氏

 長沼氏「広島大学も対面授業を復活させているが、オンライン授業が主流。一堂に会する機会が減り、大学の存在理由が問われているが、(これからの大学には)価値観や知識の体系を伝えていくという新しいあり方が求められる。一種のコンテンツ産業だ。視聴者とZoomでつながっているように(コミュニケーション不足も)テクノロジーでカバーできる。今後もオンライン化は進むだろう」

Scrum Ventures 戦略担当バイスプレジデント 桑原智隆氏
Scrum Ventures 戦略担当バイスプレジデント 桑原智隆氏

 西田氏「たとえば学会や技術会議をオンラインで開催しても盛り上がらないという話がある。それは(会場を移動する)廊下で知り合いと話すことが重要だったから。ポイントは今あるテクノロジーに『廊下機能』がないということ」

 最後に「現代社会における組織の課題」については以下のようにコメントしている。

 長沼氏「右肩上がりという『成長神話』を見直す。経済活動が停滞するなかで過去の成長モデルが機能していない。一昔前は『お客さまは神さま』だが、最近は会社にとって一番大事なのは『株主』となっている。右肩上がりの時代はごまかせたが、コロナ禍でばれてしまった。何を大事にすべきか企業は問われている」

 西田氏「組織にとって重要なことの見直し。とあるコンテンツ企業経営者は『君のイグジットは何だ、と問われるが、俺の目的は会社運営だ』という。組織の規模にかかわらず、その企業にとって重要なのは何かが問われる。たとえばシリコンバレーのトップ企業経営者の姿を日本のスタートアップ企業がまねても意味がない。それは目的が違うから。右肩上がりではなくなったからこその目的設定が重要なポイントとなる」

アシスタントを務めたヴァイオリニストの松尾依里佳氏
アシスタントを務めたヴァイオリニストの松尾依里佳氏

 にしゃんた氏「不易流行(俳諧には永遠に人を感動させる「不易」と時代における先端性を指す「流行」があり、不易は流行の作品のなかで永遠性の強いものが残ったにすぎない、という松尾芭蕉の言葉)。理想は多様性や環境変化を受け入れつつ、どのように変わっていくか。そこにたどり着ければハッピーだが、現実はそうではない」

 最後に長沼氏は「生物にとって重要なのは進化=変化である。生物学でいえば適応だが、変化できるか否かはとても重要だ」と付け加えた。

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