富士通とZippinは12月8日、実店舗のデジタル化(DX)に向けて協業を開始したと発表した。富士通が日本市場の総代理店として、Zippinのレジレスソリューションを再販する。2021年3月をめどに販売を開始する見通し。それに伴い同日、説明会が開催された。
Zippinは米国発のスタートアップ企業。同社のレジレスソリューションは現在、米国、ブラジル、日本、ロシアで展開され、10店舗で利用されている。富士通とZippinは2020年2月から、ローソンでレジなし店舗を実証しており、その成功が後押しとなって今回の協業に至ったという。
富士通 リテールビジネス本部 DXビジネス事業部 シニアディレクターの石川裕美氏は、同社とZippinが提供する購買体験について説明。買い物客はまず、専用のアプリをダウンロードして、クレジットカードを登録する。入り口のゲートで、アプリのQRコード、もしくは富士通研究所が開発した、手のひらの静脈と顔で本人を特定するマルチ生体認証で入場する。
店内に入ると、床の重量センサーや天井のカメラが買い物客の体型や衣服などの特徴を捉えることで、いつ、誰が、何を買ったのかを認識する。商品を手に取って退店すると買い物が終わったと認識され、自動的に決済が行われる。顧客がバッグやポケットに商品を入れても自動で決済されるので、店舗は万引のリスクから解放されるという。
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このソリューションにより、小売業は店舗業務の約3割を占めるレジ業務を完全に削減できるとしている。買い物客はレジ待ちや精算の手間がなくなるほか、スマートフォンを手に持つ必要もなくなり、ストレスフリー/ハンズフリーな買い物が実現する。加えてレジスペースがなくなることで、これまで出店条件に合わなかった狭小なスペースへの出店も可能となる。例えば、在宅勤務の普及で出社する従業員が減少したオフィスにおいて、出来立ての弁当などを販売することができるという。
このことから同ソリューションは、小売業だけでなく、病院やマンションなど幅広い業界がターゲットになる。石川氏は「業界を超えたコラボレーションにより、欲しい物が欲しい時にすぐ買えるという新しいマイクロマーケットの創出を推進していく」と語った。
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最後に石川氏は、この取り組みのロードマップを説明。2020年度内に、富士通は日本市場に対し、Zippinのライセンス販売を開始する。2021年9月までには、買い物客/店舗向けのアプリをそれぞれ提供。加えて、顧客企業の既存システムに接続するAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)サービスをSaaS(Software as a Service)として提供する。そして2023年までに、100店舗以上への展開を目指しているという。
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