セールスフォース、「​Customer 360 Audiences​」などを発表--顧客データの一元管理を支援

末岡洋子

2020-12-09 06:00

 セールスフォース・ドットコムは12月8日、デジタルマーケティング領域の新製品として、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)の「Customer 360 Audiences」と顧客エンゲージのためのシステム「Interaction Studio」の国内提供を開始した。顧客データの一元管理やリアルタイムなエンゲージメントなどを支援する製品となる。

 新たに国内で提供する2製品は、同社のマーケティングソリューション「Marketing Cloud」に入るものとなる。9月に米国本社が発表したデジタルエクスペリエンス領域の新コンセプト「Digital 360」の具現化を支援する。

セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 プロダクトセールス兼韓国リージョン統括 ジェネラルマネージャーの笹俊文氏
セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 プロダクトセールス兼韓国リージョン統括 ジェネラルマネージャーの笹俊文氏

 同日開いた記者会見で専務執行役員 プロダクトセールス兼韓国リージョン統括 ジェネラルマネージャーの笹俊文氏は、デジタルマーケティングの課題として、顧客の76%が「部門間で連携した一貫性のある対応を期待している」のに対し、54%が「セールス、サービス、マーケティングの間で情報が共有されていないと感じている」など、「期待と現実の間にギャップが生まれている」とする。

 マーケティング担当者もこうした課題を認識しており、「リアルタイムな顧客エンゲージメント」「チャネルやデバイス全体で一貫性のあるカスタマージャーニーの創出」「顧客データソースの一元化」「一元化された顧客データを全ビジネスユニットで共有」ーーが最優先課題の上位5つに入っているという。

 実際、多くの企業で顧客データがバラバラに分散している。同社の調査では、マーケティング担当者は、25ものデータソースから顧客データを取り寄せているという。これは世界の平均値の2倍程度で、日本のマーケティング担当者にとって顧客データの一元化は、大きな課題になっているといえそうだ。2つの新製品は、このような課題の解決を支援するものという。

 Customer 360 Audiencesは、「Single Source of Truth」として、顧客情報を一元管理する。この上に顧客のプロファイルを構築することで1対1でのエンゲージメントにおいて必須となるセグメント化が行える。また、人工知能(AI)を利用した洞察を得ることもできるという。

Customer 360 Audiencesでは、マーケティング担当がGUIを使ってデータの統合・管理ができるため、システム側とマーケティング担当が連携して迅速に施策を展開できるという。なお、「Audience Studio」(旧製品名「Salesforce DMP」)として提供するDMP(データ管理プラットフォーム)の提供も継続する。Audience Studioは買収したKruxを土台としており、クッキーベースで取得したデータが基本。これを2ndパーティ、3rdパーティのデータプロバイダと掛け合わせ、アウトプットのアクティベーション先はDSP(Demand Side Platform)側となる。「Customer 360 Audiencesは1stパーティデータが中心でそれをセグメント化し、アウトプットのアクティベーション先はMarketing Cloudのメッセージングプラットフォームとなり、デジタル広告側のDSPとはつながっていない」と笹氏は説明した
Customer 360 Audiencesでは、マーケティング担当がGUIを使ってデータの統合・管理ができるため、システム側とマーケティング担当が連携して迅速に施策を展開できるという。なお、「Audience Studio」(旧製品名「Salesforce DMP」)として提供するDMP(データ管理プラットフォーム)の提供も継続する。Audience Studioは買収したKruxを土台としており、クッキーベースで取得したデータが基本。これを2ndパーティ、3rdパーティのデータプロバイダと掛け合わせ、アウトプットのアクティベーション先はDSP(Demand Side Platform)側となる。「Customer 360 Audiencesは1stパーティデータが中心でそれをセグメント化し、アウトプットのアクティベーション先はMarketing Cloudのメッセージングプラットフォームとなり、デジタル広告側のDSPとはつながっていない」と笹氏は説明した

 一方のInteraction Studioは、2月に買収したEvergageをベースとし、顧客一人ひとりとのエンゲージメントを設計できる。また、搭載済みのSalesforceのAIであるEinsteinを利用し、体験を最適化することもできる。

 会見で笹氏は、「企業の多くがバッチでセグメンテーションして、1つのグループにして、ジャーニー(顧客との関係構築の道筋)を走らせている。これを1ランク上げて、よりリアルタイムなジャーニーにする」と述べた。例えば、顧客が来店したその瞬間をくみ取り、その顧客向けに特別なクーポンを配信したり、あるいは顧客がコールセンターに電話をしたら、その時点でのプロファイルを参照してコールセンターのエージェントにAIが指示を出したりするなどの例を挙げた。

顧客情報管理画面。顧客のユーザーIDなど顧客識別子により、一元的に行動データを管理できる
顧客情報管理画面。顧客のユーザーIDなど顧客識別子により、一元的に行動データを管理できる

 「2製品を利用することで、信頼できる情報を一元化し、その情報を部門間で共有しながら顧客中心型の接客や顧客中心型のデジタルマーケティンができる」と笹氏。顧客との接点がつながることで、カスタマージャーニーが実現するという。このようなツールを利用することにより笹氏は、マーケティング担当の役割も変わると見る。「それぞれの(顧客との)接点を管理するマーケティングだけではなく、その接点をつなげるジャーニーをオーケストレーションする立場に変わるのでは」(笹氏)という。

 会見の最中に披露したデモでは、2製品を使ってデジタルとリアルがリンクした顧客体験を設計して見せた。Interaction Studioで顧客のウェブ上での行動データから興味や関心を推測し、その顧客が店舗に来店すると、「Service Cloud」にInteraction Studioが推測した興味や関心の情報が表示される。店舗でそれに基づいた接客を行い、その後に顧客がオンラインになると表示されるコンテンツが最適化されるという具合だ。

セールスフォースのデジタルマーケティングソリューション体系
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