セールスフォースの新しい顧客データ管理基盤--顧客ごとにリアルタイムに対応 - (page 2)

河部恭紀 (編集部)

2020-12-14 07:40

 Customer 360 Audiencesは次を可能にする機能を持つ。

  • 単一の顧客IDを作成:メールやオンライン履歴、Eコマース、顧客情報管理システム(CRM)など、複数のチーム、デバイス、システムにまたがる顧客データを一元化。
  • 効果的な顧客セグメント化を実現:ファーストパーティー、セカンドパーティー、サードパーティーのデータを簡単に組み合わせて、特殊なオーディエンスセグメントを作成、分析できる。
  • コンプライアンスを満たす信頼性の高い体験を提供:送信拒否や同意のフラグを設定できるダッシュボードと安全なプロビジョニング手法で、顧客データや同意内容を簡単に管理。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)や米カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)などの新たな法的基準に自動的に準拠。
  • あらゆるやりとりをパーソナライズ:ソーシャルプラットフォームやオンライン広告などに合わせてカスタマイズされたコンテンツを適切なセグメントや顧客タイプに向けて発信。
  • 複数のチャネルやクラウドから深いインサイトを抽出:マーケティング、コマース、営業、サービス、それぞれのやりとりから顧客の全体像を正確に把握し、データにもとづいた最適なライブキャンペーンを展開できる。

 Customer 360 Audiencesのメリットとして、システム部とマーケターが連携してデータを効率的に活用することが可能になることがある、と同社のソリューションエンジニアリング統括本部 マーケティングクラウド シニアソリューションエンジニアを務める石田貴仁氏は述べる。

 Customer 360 Audiencesでは、データテーブルの作成と管理、データ加工をGUIで実行できるため、システム部のリソースを大幅に削減できると説明。システム部がSQLやコードを記述して設定していたデータ同士の紐付けやデータテーブルの管理は、Customer 360 Audiencesの管理画面のGUIで実行できる。そのため、システム部は、データを出力するだけで良くなる。マーケターは、出力されたデータを取り込んで、施策に合わせてGUIで自由にデータを加工、セグメントすることで、スピーディーに施策を展開できるようになると石田氏は説明する。

 Interaction Studioは次を可能にする機能を持つ。

  • 個別のインサイトを収集:詳細な行動追跡、さまざまなソースからのデータ集約、アフィニティーモデリングを通じて、顧客一人ひとりの興味や意図を正確に把握。
  • 人工知能(AI)によって最適化された体験を提供:マーケターにとって使いやすく、カスタマイズ可能なアルゴリズムでデータを分析。リアルタイム(30ミリ秒以下)で判断を下すため、あらゆるやり取りが1対1レベルで調整される。
  • あらゆるタッチポイントでエンゲージメントと連携:特定のチャネルでのやり取りから学習した顧客の特徴を活用して、あらゆるチャネルにおける体験を即座に改善。
  • 体験のテストと分析:継続的なA/Bテスト、レポート、分析を通じて、パーソナライズキャンペーンやカスタマーエンゲージメントを最適化できる。

 「スマートフォンやアプリの普及によって、顧客体験のデジタルシフトが進んでいる。一方で、デジタル上の体験と店舗でのリアルな体験が連動しておらず、顧客とのコミュニケーション上の課題となっているといった相談が多く寄せられている」と石田氏。Interaction Studioを使うことで、「顧客がオンライン上で見るクリエイティブやメッセージと実店舗の店員による案内がリンクすることにより、デジタルとリアルがリンクした優れた顧客体験を提供できる」(同氏)

 Interaction Studioでは、顧客がいつどこで何をしたかを一元管理することから、さまざまな顧客接点上での情報をユーザーIDやメールアドレスといった複数の識別子を使って紐付け、顧客一人ひとりの行動データとして管理できる。AIが顧客の行動履歴から興味や関心を推測するが、単なるレコメンド商品だけでなく、色やブランドなど顧客の嗜好までを捉えることが可能だという。さらに、顧客の行動を補足してからコンテンツの最適化までを30ミリ秒で処理可能なことから、顧客の行動情報を使ってコンテンツをリアルタイムで最適化することでデジタル上の顧客体験を強化できる。

 店舗の店員やカスタマーサポートのオペレーターが顧客対応時に使うCRMサービス「Service Cloud」にInteraction Studioが推測した顧客の興味や関心を表示することで、デジタルとリアルがリンクした顧客体験を作ることができる。さらに、接客後の顧客のフィードバックをCRMに記録することにで、リアルでの行動を元にオンライン上のコンテンツを最適化することもできると石田氏は述べる。

変わるマーケターの役割

 Interaction StudioはSalesforceが2020年2月に買収したEvergageの製品をベースにしており、グローバルではさまざまな業種や分野で成果を上げていると前田氏。15%のコンバージョン率の向上、8%の売上拡大、9%のサービスコストの削減、12%の顧客離れの減少という実績があるという。

 「今回、この2製品が揃うことで、信頼できる情報の一元化が可能となり、その情報を部門間でシェアしながら、顧客中心型の接客、顧客中心型のデジタルマーケティングが実現できる」と笹氏は述べ、「これらの接点がつながることによって、カスタマージャーニーが実現する。そして、マーケターの役割がそれぞれの接点を管理するだけではなく、ジャーニーをオーケストレーション(指揮)するような立場に変わってくると思っている」と続けた。

Interaction Studioでの顧客情報の管理。さまざまな顧客接点上での情報をユーザーIDやメールアドレスといった複数の識別子を使って紐付け、顧客一人ひとりの行動データとして管理する。
Interaction Studioでの顧客情報の管理。さまざまな顧客接点上での情報をユーザーIDやメールアドレスといった複数の識別子を使って紐付け、顧客一人ひとりの行動データとして管理する。
提供:セールスフォース

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