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デジタル主導によるCOVID-19からのビジネス回復--2021年のIT戦略

Suzanne Kelsall (エントラストジャパン/日本データカード)

2020-12-28 06:00

 世の中は変化しました。この変化はおそらく永続的なものでしょう。この変化に伴い、IT予算も変更を余儀なくされています。企業・組織は、今持っているもの、達成しようとしていること、そのために必要なものについて改めて棚卸しをし、ポストコロナの経済的低迷による潜在的影響を考慮するとともに、優先順位の再評価を行っています。

 ビジネスの回復期というこのフェーズは、デジタルイニシアチブを推進して、非接触トレンドやオペレーションの継続性に大きな力を入れる絶好のチャンスです。ですが、2020年の異例の事態に対応することを余儀なくされたため、IT関連の支出は大きく再構築されることになりました。IDCのレポートによれば、アジア太平洋地域におけるIT関連の支出は1.3%減少すると予測されています。

 そのためビジネスリーダーは、モダナイゼーションの取り組みを追求するために、説得力のあるビジネスケースを構築する必要があります。もちろん、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがいまだ継続中であり、世界経済が極めて不安定な状態にあるということを考慮する必要があります。景気停滞に対応すべき状況においても2021年のビジネスリーダーは、コアとなるデジタルの柱に持続可能な投資を行う必要があります。そうすることで組織が求める回復を実現して新たな混乱に対応できるようにするとともに、成長を持続することができるのです。

ポストコロナのビジネス環境を想定した2021年のIT投資

 世界的なパンデミックの発生直後、個人や企業の新しい生活様式、在り方を形作る上でテクノロジーが決定的な役割を担うようになりました。2020年9月に発表されたレポートによれば、アジア太平洋地域の消費者の半数以上が、今後12カ月以内にオンライン支出が増えることを想定しており、また43%が、今後のより高いオンライン体験を期待しています。実際、今回のパンデミックによって「非接触エコノミー」という新たな時代が形作られつつあります。これは、消費者の利便性を重視し、人と人との接触の必要性を減らすことを特徴とし、つながりをもたらす技術やデータ分析により実現されるものです。

 例えば、英国国民保険サービス(NHS=National Health Service)では、医療現場においてスマートフォンを活用したパスワードレスのアクセス認証を導入し、施設への入退室やシステムアクセスに非接触型かつ認証時間の短縮を実現しています。さらに、カナダの入国審査では、スマートフォンの専用アプリで事前に必要事項を入力してQRコードを発行しておけば、空港の専用端末にスキャンするだけで必要な申告が終了するというシステムにより、審査時間の効率化を図ることに成功しています。

 また、「巣ごもり消費」の額は2倍以上になり、2025年までに3兆ドルに達すると予測(PDF)されています。この額の5分の1は、COVID-19のパンデミックに起因するものです。非接触型の「屋外消費」が普及すれば、オフラインでの体験を、安全な環境で非接触型のサービスとして求める新しい顧客セグメント(Deloitteが「タッチレスストアエクスペリエンサー」と命名)が誕生します。このようなバリュー提案を独自に構築できれば、企業は競合他社との差別化を測ることができるでしょう。

 組織の内部に目を向けると、ほとんどの従業員は在宅勤務にシフトしており、組織のダイナミクスはさらに変化しています。シンガポールのサーキットブレーカー期間のピーク時には、同国の従業員人口の80%以上が在宅勤務に移行しました。そしてシンガポールの従業員の10人中9人は、この在宅勤務の継続を望んでいます。

 デジタルファーストのビジネスアプローチであれば、ビジネスの継続性を維持し、イノベーションを実現しながら、COVID-19関連の課題と経済的現実の両方にバランスよく対応できます。リモートワーカーのサポートから消費者へのベストなデジタル体験の提供まで、2021年のIT投資に新たなビジネスニーズを反映させることがきわめて重要となります。

ステークホルダーの賛同を得た合理的なIT意思決定

 予算計画の観点から考えれば、この期間中に行われた主要な投資は、長期的なビジネス目標の達成や変革に貢献するはずです。ステークホルダーの賛同を得るとともに前向きな事業見通しを構築するためには、明確で説得力のある計画が不可欠です。 IT部門は、日常業務の改善のみならず、将来的な価値の実現に協力して取り組まなければなりません。従来の構造を変更し、最新のシステムを導入するまでには時間がかかります。慎重な長期計画とコラボレーションが重要となる課題です。

 ITのアップグレードにおける理想的なシナリオでは、ビジネスの回復と成長の全ての柱に対処し、機能の成熟度、サービスとオペレーションにおける合意、オペレーション効率、ネットワークセキュリティを検討して、企業戦略における明確な見通しを示す必要があります。そのため、強力なIT人材プールが求められます。グローバルなデジタル人材獲得競争は激化していますが、その中においてもIT人材の採用が企業の2021年のIT戦略で重要となります。

 全体を見ると、400万人を超えるサイバーセキュリティの専門家が世界中で不足しています。競争力の高い人材パイプラインを維持するためには、広い範囲で人材を探す、スキルアッププログラムを行う、部門の枠を超えたトレーニングを行うーーなど多面的なアプローチを講じる必要があります。予算的な観点から言えば、提案されたIT投資で付加価値と効率がもたらされると同時に、潜在的なリスクに対応できる緊急時対応計画の余力が残されているという安心感を、CFO(最高財務責任者)は求めるでしょう。例えば、COVID-19の第2波は、計画されているITプロジェクトにどのような影響を及ぼし得たのでしょうか。組織は、プロジェクトの進捗状況を定期的に評価するレビューチームの作成を検討する必要があります。

 最後に、ステークホルダーの賛同を得られる、組織の次の段階の成長を目指すための、統一されたビジョンの確立です。あらゆるレベルの従業員に、変更、マイルストーン、進捗状況に関する情報を提供し、最新の情報を周知することが賢明です。組織内の士気を少しでも向上できれば、企業組織の展望を好転させることにつながります。

 ビジネスリーダーにとって、前例のない混乱に見舞われている現在のビジネス状況に対応し、それを乗り越えることは、この10年間において最大の課題となるかもしれません。普通ではない時代には普通ではない対策が求められます。技術革新に支えられた明確な対応計画を持って回復の道を進むことができれば、組織はこの危機を乗り越えることができるでしょう。

Suzanne Kelsall
日本データカードおよびエントラストジャパン 代表取締役社長
2020年6月5日よりEntrust Datacardの日本事業トップとして、日本データカードとエントラストの代表取締役を務める。文化的および階層的な障壁を克服するための実行可能な行動倫理を持ち、成功のための現場のモチベーションアップを常に図っている。以前はAutodesk日本法人のインサイドセールストップ、サービスソース・インターナショナル・ジャパン、レノボ・ジャパン、デルで幹部職を歴任。

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