AWS re:Invent

公共分野のITは「移行」と「統合」が基軸に--AWSが複数の新施策

國谷武史 (編集部)

2020-12-16 06:00

 Amazon Web Services(AWS)は、米国時間12月1日からオンラインで開催している年次イベント「re:Invent 2020」で、公共分野(パブリックセクター)における複数の新たな施策を発表した。グローバルパブリックセクターパートー&プログラム担当バイスプレジデントのSandy Carter氏は、「移行」と「統合」をキーワードに挙げる。

AWS グローバルパブリックセクターパートー&プログラム担当バイスプレジデントのSandy Carter氏
AWS グローバルパブリックセクターパートー&プログラム担当バイスプレジデントのSandy Carter氏

 Carter氏によると、政府や自治体、教育・医療、公益組織などを対象とするAWSのパブリックセクター事業は、この分野に関するプログラムが前年比45%増となり、大きく成長しているという。2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応に伴うさまざまな取り組みにおいて同社のクラウドサービスがプラットフォームとして採用された。

 コロナ禍への迅速な対応が必須となる中で、Carter氏がキーワードの1つに挙げる「移行」は、レガシーなパブリックセクターのITシステム環境がその足かせとならないためにも重要なテーマにもなる。日本では、秋に運用を開始した第二期政府共通プラットフォームがAWSで構築され、これも「移行」に該当する事例だろう。

 この「移行」をパートナーと推進する中核的なプログラムとして同社は、「Migration Acceleration Program(MAP)」を展開、コンピテンシー認定パートナーはグローバルで100社以上あり、日本企業では富士通や日立製作所、NEC、富士ソフト、野村総合研究所、NTT、NTTデータ、サーバーワークスなどがある。

マイグレーションコンピテンシーパートナーの一例
マイグレーションコンピテンシーパートナーの一例

 Carter氏は、近く導入する予定の新施策として「AWS Mainframe Migration Competency」や「AWS Energy Competency」を明らかにした。前者はメインフレームをAWS環境に移行するコンピテンシーを備えたパートナーを認定するもので、「IBMやUnisysから旧DECといったさまざまなメインフレームについて、日本を含めたユーザーのクラウド移行実績を持つパートナーと推進していく。特に地方公共団体では多くのメインフレームが稼働している」(Carter氏)という。

 後者のAWS Energy Competencyは、地球温暖化につながるとされる二酸化炭素の排出抑制などに向けたエネルギー分野の企業を支援する取り組みになる。発表時点では事前アナウンスの段階だが、「エネルギー企業にとって環境対策は運営コストの削減と並ぶ重要課題であり、このプログラムが取り組み全体を大きく底上げするものになると期待している。2021年の正式スタートを目指す」(Carter氏)としている。

 また、自然災害など非常事態への対応におけるクラウド活用を支援するプログラムとして2019年に発表した「AWS Public Safety&Disaster Response Competency」も拡張し、治安の維持や緊急事態からの回復などを支援するテクノロジー提供パートナーが追加された。

拡張されたAWS Public Safety&Disaster Response Competency
拡張されたAWS Public Safety&Disaster Response Competency

 Carter氏は、これらのプログラムの位置付けを「ミッション」とも呼び、ニーズやユースケースといった目的別のアプローチで、ユーザーの取り組みをパートナーと支援していくものと話す。この「ミッション」にテクノロジーの観点でアプローチするパートナープログラム(テクノロジーパートナープログラム)があり、「統合」はこちらのキーワードに該当する。

AI/MLにおけるイニシアティブ
AI/MLにおけるイニシアティブ

 テクノロジーパートナープログラムでは、AI/ML(人工知能/機械学習)、5G/IoT(第5世代移動体通信システム/モノのインターネット)、サイバーセキュリティ、AWS Outpostsを挙げ、増大し続けるデータを活用するためのこれらテクノロジーの利用をパートナーと推進していく。例えばAI/MLは、コロナ禍における住民から公共組織へのさまざまな問い合わせに、迅速で円滑に対応するためのチャットボットサービスに活用可能なテクノロジーとなる。サイバーセキュリティについては、コロナ禍で脅威が400%増加しているとし、「安全な在宅勤務や(住民サービスのための)ウェブポータルの保護が非常に重要であり、AWSにとって最大の優先事項になる」(Carter氏)

 Carter氏によれば、「統合」は、これらテクノロジーパートナープログラムを通じてパートナーが提供する先進テクノロジーをクラウド上で組み合わせ、活用していくという位置付けになる。「ユーザーにとっては統合された先進テクノロジーをいち早く利用できるメリットがあり、パートナーにとっても自社の能力をAWSのソリューションと組み合わせてユーザーに提供できる意義がある」(Carter氏)

「統合」ソリューション例ではクラウドコンタクトセンターのAmazon ConnectやVMware Cloud on AWSが代表的となる。なお、VMware Cloud on AWSは「移行」ソリューションにも思えるが、「パートナーの観点ではVMwareとAWSを組み合わせるという意味で『統合』になる」(Carter氏)とのこと
「統合」ソリューション例ではクラウドコンタクトセンターのAmazon ConnectやVMware Cloud on AWSが代表的となる。なお、VMware Cloud on AWSは「移行」ソリューションにも思えるが、「パートナーの観点ではVMwareとAWSを組み合わせるという意味で『統合』になる」(Carter氏)とのこと

 Carter氏はまた、こうした一連のプログラムを通じてパートナー企業自身がデジタルトランスフォーメーション(DX)を図り、ユーザーの成長に貢献するだけでなくパートナー自身を成長させていく点も重要と述べ、パートナーのDX支援に注力していくとした。

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