日本マイクロソフトは12月15日、就労支援に向けてデジタルスキルの取得を支援するプログラム「グローバル スキル イニシアチブ ジャパン(GSI-J)」を開始すると発表した。ITスキルや関連するコミュニケーションスキルなどの習得を支援するとしている。
同プログラムは、Microsoftが6月に発表した世界中で2500万人を対象とするプログラム「Global Skills Initiative」の一環となる。GSI-Jでは、日本市場向けにコンテンツ内容を調整した「LinkedInラーニング」や「Microsoft Learn」の無償提供のほか、コロナ禍での就労困難者向けにアクセンチュア、デジタルハーツ、リクルート、認定NPO法人「難民支援協会」、ReBit(レビット)と連携したオンライン講座などを提供する。学生に対してもクラウドやAI(人工知能)のトレーニング、資格試験を展開する。
「グローバル スキル イニシアチブ ジャパン」の概要
同日の記者会見で日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長の榊原彰氏は、「こんな時代だからこそ、テクノロジーに対する強度を高めなければならない」と、プログラムに取り組む意義を説明した。LinkedInラーニングやMicrosoft Learnの無償提供は2021年3月までを予定している。
また、MicrosoftとIDC Asia/Pacificが日本を含む15カ国・地域で従業員250人以上の組織を対象に実施した調査(2019年12月~2020年1月、2020年7月実施)によれば、イノベーション変革を重視する日本企業は69%(アジア太平洋地域では98%)、コロナ禍をデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進チャンスだと捉える日本企業は55%(同リーダー企業は87%)、イノベーションに難色を示す日本企業は58%(同リーダー企業は36%)などの結果だった。これについて榊原氏は、「アジアに比べると日本企業はネガティブに動いている。DXに対してビハインドだ」と評する。
日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長の榊原彰氏
コロナ禍による解雇や雇い止めは数万人規模とされ、GSI-Jは、コロナ禍に影響を受けている人々へより一層の支援を行う狙いがあるという。同社によれば、ITなどを活用して業務を変革したり新しいビジネスを創出したりする上で、企業や組織はデジタルスキルを有する人材の獲得を目指しているが、人材不足が課題になっている。
GSI-Jでは、デジタルスキルの取得を急務としている人材向けには、日本企業の需要が高い科目を抜粋し日本語化したLinkedInラーニングの中から合計で約165時間におよぶ複数のコースで構成された学習コンテンツ(6+1コース)と、無償学習プラットフォームのMicrosoft Learnを組み合わせて提供する。なお、Global Skill Initiativeで提供していた「GitHub Learning Lab」は含まれない。米国で6月末にスタートした取り組みが日本で12月中旬となったのは、日本語コンテンツのためのローカライズに時間を要したためという。
LinkedInラーニングとMicrosoft Learnの無償提供は2021年3月だが、同社では状況を見ながら継続を判断することにしている。パートナーらと提供するオンライン講座などは継続的に実施し、就労困難者を支援していく。
日本マイクロソフトは、以前からNPO法人と連携して若者のIT学習支援活動を行っており、今回の取り組みでもその知見を生かして幅広いITスキルの習得やコロナ禍における働き方の共有、NPO職員のオンライン勉強会などを提供する。また、学生向けにもデッセイコミュニケーションズと提携して、特別トレーニング講座や試験料引換券などを提供する。
日本マイクロソフト 政策渉外・法務本部 社会貢献担当部長の龍治玲奈氏
現状について、榊原氏は「コロナ禍でデジタル人材の不足に拍車がかかる」と語り、政策渉外・法務本部 社会貢献担当部長の龍治玲奈氏は「失職している人々がいる一方で、企業はデジタル人材を求めている。今回の施策を通じて求められるスキル形成を支援し、人材を求める企業とつなぐことで日本全体のDXを加速させたい」と述べた。同社がGSI-Jを提供する効果についても、「直接的なメリットではなく、社会全体がデジタルに対応し、活力ある社会になることで、(Microsoftの)ビジネス成長も期待できる」(榊原氏)と話している。