新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、小売業界ではウェブ会議ツールやチャットサービスを活用したオンライン接客が一般化しつつある。そんな中、スピンシェルのオンライン接客システム「LiveCall」が注目を集めており、導入企業のアカウント数(2020年9月時点)は、2019年12月と比べて約4倍になったという。
同システムは消費者向けビジネス(BtoC)サービスに特化しており、エンドユーザーの使い勝手や感覚を考慮した作りとなっている。専用アプリが不要であるほか、画面のヘッダーにブランドロゴやイメージカラーを設定することが可能で、一貫してブランドの世界観を感じられるという。1対1/少人数のコミュニケーションに適しており、アパレルの接客に加え、不動産の営業、中古品の買取査定、特定保健指導など、幅広い目的で用いられている。
ジュエリー企業スワロフスキーの日本法人スワロフスキー・ジャパンは10月からLiveCallを導入し、旗艦店のスワロフスキー銀座においてオンライン接客サービスを開始した。同社は取材日の11月26日時点で、19件予約、14件実施、8件計上、顧客単価は実店舗の平均と比べて約5倍となっている。
オンライン接客というコミュニケーションが珍しいものではなくなってきている中、企業は顧客体験(CX)や自社のブランド価値を大事にしながら、より良いサービスを提供することが重要になると思われる。本記事では、顧客単価向上の背景やLiveCallの開発秘話について、スワロフスキー・ジャパンとスピンシェルに話を聞いた。
オンライン接客のイメージ。予約が入ると顧客の購入履歴を確認し、以前購入した商品と相性がいいものなど、最低3商品を紹介する。あらかじめ商品をトレーに用意しておくことで、スムーズな接客を実現している
本社のスワロフスキーでは新型コロナウイルス感染症の流行前から、顧客とのコミュニケーション全般にデジタルを取り入れることを計画していた。実際、スワロフスキー・ジャパンのECやLINE公式アカウントを通して来店する顧客も多いという。
そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大で店舗の営業自粛を余儀なくされ、再開後もしばらくは「銀座の街を誰も歩いていない」という状況が続いた。特にスワロフスキーの顧客は比較的年齢層が高く、コロナ禍での来店を控える人が少なくないため、同社はオンライン接客の実施に踏み切ったという。
LiveCallを選んだ理由について、導入を担当したスワロフスキー・ジャパンの藤井栄実氏は「コストが高くなく操作が簡単であるほか、ブランドの世界観を保てる点がいいと感じました。スワロフスキーでは、EC上のバナーをクリックするとLiveCallのサイトへ移行できるようになっているのですが、お客さまは外部のサイトに移ったとはあまり思わないはずです」と話す。
LiveCallには「即時通話」と「予約通話」があるが、同社ではスタッフが店舗を運営しながら対応することもあり、予約通話のみを採用した。利用の流れは、まずオペレーターがスケジュールを登録。ユーザーはカレンダーから日時を選び、メールまたはSMS(ショートメッセージサービス)のアドレスに送られた認証コードを入力する。
認証が完了すると予約が確定し、通話用のワンタイムURLがユーザーに自動で送信される。ユーザーは予約日時にワンタイムURLをタップし、通話を開始する。スワロフスキー・ジャパンでの支払い方法は銀行振り込みか代金引換で、品物の配送はスワロフスキー銀座から行っている。