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ZDNet Japan Editor's Note

紙とウェブ、デジタル化とDX

國谷武史 (編集部)

2020-12-28 06:00

 読者の皆さま、こんにちは。ZDNet Japan編集部の國谷と申します。ZDNet Japan編集スタッフによる2020年の編集後記として今回は、一般でも広く知られ始めた「DX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)」を取り上げたいと思います。

 DXは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のEric Stolterman教授らが提唱した概念とされ、言葉の誕生から15年以上が経とうしています。2020年は、世界的なコロナ禍によってこのDXが強く認識されるようになり、日本でも菅義偉首相が9月の所信表明演説で、DXや2021年の「デジタル庁」創設を重点政策の一つに掲げたことは、記憶に新しいところでしょう。

 国内のIT業界で「DX」の言葉が流行し始めたのは、2017年頃からでしょうか。「DXのためにITが必要」となれば、業界や市場の飛躍的な拡大が期待されるのは当然のこと。ITを提供する側には一大商機ですし、ITを利用する側にもコロナ禍を含むさまざまな課題の解決にITをはじめテクノロジーがその一助になるだろうと、これまで以上に期待を寄せるようになりました。

 ここで、「それなら、今までITを使っていろいろな仕組みを変えてきたことと、DXの違いは何か?」という素朴な疑問が生じます。端的には、昔に使われた「OA(オフィスオートメーション)化」や「IT化」がDXに置き換わっただけ――と。DXの「D(デジタル)」にかけて、OA化やIT化を「デジタル化」と呼ぶようなシーンも散見されます。

 デジタル化とDXに違いはあるのでしょうか。アイ・ティ・アール(ITR) エグゼクティブ・アナリストの内山悟志さんの連載「デジタルジャーニーの歩き方」に学ぶと、DXとは、「デジタル化社会に対応して、企業が丸ごと生まれ変わること」(連載記事で内山さんは「少し極端かもしれませんが」としていますが)。

 一言で表すなら、“デジタル化”は、既存の業務プロセスや組織、制度、文化といったものを、ITなどを利用して変化、整備することであり、“DX”はデジタル化を含めてビジネスモデルを大きく変える、あるいは新たに生み出すこと――となります。企業や組織がこれに取り組む中で生まれた価値が社会や市場に認められたり、ビジネスとして収益化などにつながったりすることが「DXの姿(=ゴール?)」なのかもしれません。

 この解釈に照らすと、極端に言えば、計算方法がそろばんから電卓に変わったことも、申請・承認のワークフローが紙と印鑑と手渡しから電子ファイルや電子印鑑やオンラインに変わることも“デジタル化”です。そして“DX”は、よく例に挙げられるNetflixが、DVDレンタルのビジネスからオンライン配信や作品制作のビジネスに大きく転換したような変化です。

紙とウェブ、デジタル化とDX

 私事で恐縮ですが、2021年は私が業界専門メディアの記者・編集者のキャリアを始めて20年になります。2001年にある製造業界向けに日刊新聞を発行する会社に入り、2006年からウェブメディアに軸足を移して現在までエンタープライズIT業界に携わってきました。紙とウェブ、デジタル化とDXの観点で経験を少し紹介します。

 新聞とウェブという最終的に読者に情報を提供する“形”は異なりますが、そこまでに至る業務プロセスは、どちらもデジタル化されています。例えば、「記事を出す」というフローでは、私も最初こそ研修で400字詰めの原稿用紙に取材内容を執筆し、先輩から校正や指導を受けましたが、研修後はPCで原稿を執筆し紙に印刷してファクシミリで本社に送り、それもすぐメールで送信するようになりました。オンラインで取材原稿や写真を送るシステムが導入されたのは、入社後2~3年ほどが経った頃でしょうか。ウェブメディアでは、当初から現在までCMS(コンテンツマネジメントシステム)を利用しています。新聞記者でもウェブ記者でも、記事の文章を読者が見る形にするまでの作業の大部分は、既にデジタル化されています。

 一方で、読者に情報を提供する“形”は異なったままです。現在の“DX”の一端になるか分かりませんが、新聞社時代に新聞の配達をオンラインに切り替えるという業務に携わったことがありました。

 当時は、新聞販売店による配達網がない地方や離島などの一部の読者に新聞を郵送していました。2000年頃はISDNによるインターネットの常時接続が普及し始め、そこで「紙の新聞を発行から数日遅れで読者にニュースを届ける状況を改善する」などの理由(その他にもあったと思いますが)から、インターネット配信に切り替えるという試みでした。読者のPCに専用ビューワーをインストールしてもらい新聞紙のレイアウトのままのデータ(デジタル版)を配信して、毎日読んでいただくという仕組みです。

 今でこそブラウザーや専用アプリでニュース記事を読むスタイルは当たり前ですが、当時はデジタル版への切り替えをお願いした読者から多くの反発がありました。「紙の方が便利だ」という年配の方はもちろん、若い方でも「遅い、使い勝手が悪い」という意見が寄せられたのです。その理由は、インターネット常時接続とはいえ、通信速度はせいぜい数十kbps、データ容量は1ページ当たり数MBあり、新聞全体では20ページ強(特集を入れると30~40ページほど)ですから、ダウンロードだけで数時間を要しました。ダウンロード後に新聞のデータを読むにも、それなりのPC性能が必要でした。

 当時としては斬新な挑戦ですが、やはり“ユーザー体験”の厳しさがあり、購読を解約される読者がそれなりにいて難しい結果になりました。「たられば」の話をしても仕方ありませんが、もし当時のICTインフラが現在のようであれば、ひょっとしたらこの挑戦が“DX”の成功例として、今に語り継がれる結果になっていたかもしれません。ただ、そもそもネットで記事を読むという行為が一般的になるにも時間を要したように思います。私がウェブメディアに軸足を移してからこの10年ほどで徐々にそれが身近になりましたし、やはり結果として、20年近く前の挑戦は時期尚早ということになっていただろうとも感じます。

 先の内山さんによれば、DXには、ビジネスの高度化や顧客への新規価値の創出といった「漸進型イノベーション(深化)」と、新しいビジネスやサービスの創出とビジネスモデルの変革の「不連続イノベーション(探索)」があり、その推進のアプローチや目指すゴールは異なるものと言います。DXのゴールを定義することは難しいですが、自社が変革することはもちろん顧客も変化していく中で、「これがわが社のDX」という姿が確立されていくのかもしれません。

 ZDNet Japanは、エンタープライズIT業界専門のウェブメディアとして20年近い歴史を持ちます。生まれながらにしてデジタルのメディアというのはやや大げさかもしれませんが、デジタルであろうとも変革は必要ですし、2021年も「ZDNet Japanとしての“DX”とは何か?」を常に探し挑戦しながら、読者の皆さまのビジネスに資する情報を提供していきたいと思います。

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