ZDNet Japan Editor's Note

「互いの強みを取り入れる」店舗とEC--2020年のリテールテックを読み解く

大場みのり (編集部)

2020-12-30 06:00

 読者の皆さま、こんにちは。ZDNet Japan編集部の大場です。編集後記の3回目となる今回は、小売事業にデジタルを活用する「リテールテック」の動向について、お話ししたいと思います。

 近年、EC(電子商取引)が急速に普及している一方、高価なものや買い慣れていないものに関しては、依然として店舗へ赴き、販売員の方の話を聞きながら決める人も多いのではないでしょうか。だからこそ、小売企業は店舗の役割を改めて考える必要があると感じます。

 それに加え、2020年は取材を重ねる中で「店舗とECが互いの強みを取り入れる」という動きが見られました。

 例えば、アパレル企業のマッシュスタイルラボは8月、店舗の業務効率化に向けて、アイエントの伝票レスシステム「POPPO」を導入。同システムは、伝票による取り寄せや取り置きなどの管理をアプリに置き換え、顧客にショートメッセージサービス(SMS)で通知します。

 POPPOでは伝票のデジタル化に加え、取り置きした顧客に対し、期限の前日に自動でリマインドメールを送信する機能なども搭載しています。取り置きについて、アイエント 代表取締役の大森智人氏は「『ECで商品をカートに入れたが、決済はしていない』という状況に似ている」と語っていました。ECでは「カゴ落ち」の対策としてリマインドメールを送ることが一般的であるため、店舗にもその仕組みを取り入れた形です。

>SMS活用で伝票をデジタル化する「POPPO」--アパレル業界の働き方を改善へ

 一方、店舗の強みをオンラインへ拡大している企業もあります。ジュエリー企業のスワロフスキー・ジャパンは、10月からスピンシェルの「LiveCall」を導入し、旗艦店のスワロフスキー銀座においてオンライン接客サービスを開始しました。

 コロナ禍で不要不急の外出を控える動きがある中、引き続き買い物をしてもらうための取り組みですが、結果として「店舗と比べて得られる情報量が少ない」という一般的なECの弱点も補完しています。

 同社のEC事業は順調に伸びているそうですが、ジュエリーは写真だけでは色合いや輝きが伝わりづらいほか、多くの人にとって気軽に買える価格ではありません。一方オンライン接客では、販売員の方に相談しながら、さまざまな角度で商品を見たり、大きさを確認したりできます。

 スワロフスキーではECからオンライン接客が予約できるようになっており、ユーザーの中には「ECで商品はチェックしたが、オンライン接客でも確認したい」という理由で申し込む人もいるそうです。

 店舗とECにはそれぞれの役割がありますが、双方が「当然のように」やっていることを互いに取り入れることで、売り上げが上がったり、顧客にとって充実した買い物体験につながったりするかもしれません。

>スワロフスキー、オンライン接客システム「LiveCall」導入--顧客単価は実店舗の約5倍

 さて、2021年はどのようなツールが登場し、買い物をより便利に、楽しくするのでしょうか。日頃ECで欲しい商品の見当を付けてから店舗を訪れることが多い私は、ブランドのアプリやウェブサイトで「お気に入り」に登録した商品が店舗のどこにあるかを教えてくれる機能があればいいと感じます。

 実際、NTTデータは2020年2~3月頃、東急ハンズの協力のもと、次世代2次元コード技術を活用して商品マップを作成/提供する実証実験を行ったそうです。これにより、販売員の方に聞かなくても気になる商品にたどり着けることが期待されるため、実現を心待ちにしています。

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