各部門のKPIは全社にオープンに
セールスフォースでも過去には部門間連携でつまづいた経験があります。各部門にKPIが設定されていましたが、そのKPIの数値を出すために、それぞれが少しずつ見栄えのよい数値にデータを加工して、持ち寄っていたのです。部門ごとの数値はよいのに、なぜ売り上げが上がらないのか、原因探しをしなければなりませんでした。
本来であれば、ビジネス上の数値を加工することなくダイレクトに抽出し、全社でリアルタイムに共有しなければなりません。お客様を中心に、各業務でどのようなことが行われているのかを、データの変化としてみられる仕組みが必要なのです。
The Modelでは、顧客の購買意識の変化をファネル(漏斗)で表す“マーケティングファネル”を活用し、次のような数値を部門ごとのKPIとして追うようにしています。
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各部門ではさらに細かく、その数値を達成するまでの流れをファネルで管理して、量(件数)と質(掛け率)の変化をみていきます。件数と掛け率の双方をみていくことで、どこがボトルネックとなっているかがわかります。主観ではなく、数値として誰もが納得できる形で可視化することが重要です。
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さらに、部門間連携を強めるためには、部門が隣り合うKPIについても双方で責任を持つことです。例えば、マーケティングであればインサイドセールスの商談の総量、インサイドセールスであれば営業の契約金額、営業であればカスタマーサポートのその後の継続率、というように隣り合う部門の数値をKPIに設定します。前のプロセスの部門は、そのKPIを上げるためにより質の高い仕事を目指しますし、お互いに課題解決のために議論したり、サポートしたりといったことが自然にできるようになります。
成長のための部門、仕組み、システムを整えよう
2回にわたってスタートアップの組織づくりとCRM活用を中心に説明しました。成長の天井をつきやぶらなければいけないスタートアップにとって、顧客を中心に部門間連携していかに高速にPMFを実現できるかが、大きな分かれ目になります。
さらにニューノーマルという新しい時代を迎え、状況が刻々と変化し、誰にも先読みができない中、お客様の変化に迅速に対応することが求められます。スタートアップはビジョンに基づき組織を作り、事業活動をしているでしょう。そのうえでPMFとニューノーマル対応の双方を実現するには、分業できる組織体、成功を再現できる仕組み、業務をデータで管理できるシステムの3つが必要です。
スタートアップの特徴の一つに、組織の反応力が高く、柔軟性が高いことがあります。ぜひ、さまざまなテクノロジーを自社で導入し、率先して新しい働き方にチャンレンジしてほしいと思っています。特にテクノロジー系のスタートアップであれば、お客様のDXを推進して変化させる立場でもあります。まずは自らが先駆者として変わって成功することで説得力を高められます。
本連載では、中小企業のDXをテーマに6回にわけて解説しました。自社のDXについて考えるきっかけになれば幸いです。
- 鈴木 淳一(すずき じゅんいち)
- セールスフォース・ドットコム
- 執行役員 セールス・ディベロップメント本部 本部長
- 広告系ベンチャー企業の営業マネージャーを経て、2010 年インサイドセールス・レプレゼンタティブ としてセールスフォース・ドットコムに入社。 コマーシャル営業本部部門にて外勤営業を経験した後、2017年8月にインサイドセールス部門Sales Development Representative(SDR)事業部 事業部長に就任。 2019年2月からはスタートアップ戦略部 事業部長も兼任。 2020年2月、インサイドセールス部門全体の執行役員 本部長に就任。スタートアップ/中堅中小およびエンタープライズ部門を統括。現在に至る。 現在はインサイドセールス、The Model、SaaSのノウハウ提供にも注力している。