仕事のための仕事をなくすことができる
NASサーバーと同じ感覚でリアルタイムに関係者がファイルを共有、編集できる環境として複数サービスを検討した結果、クラウドストレージ「Dropbox Business」のEnterpriseプランを採用した。池端氏は採用した理由として、Dropboxが他のクラウドストレージサービスとは趣旨が異なるサービスであると強調する。
「Dropboxは、アップロードとダウンロードのスピードが速く、共同編集や共有に軸足を置いている。データの保管ではなく、ファイルの共有とNASサーバーをなくしてBCPの問題をクリアしたいという本来の趣旨で考えるとDropboxだった」と語る。
また、導入にあたって複数の製品を使用して検証作業を行った同課 課長代理の西山英治氏は、Dropboxは仕事のための仕事をなくしていく、仕事の手間をなくしていくことに尽力している製品であると評価する。
戸田建設 建築工事統轄部 課長代理 西山氏
「やり取り自体がものすごく多いなかで、ちょっとした作業の積み重ねが現場の残業につながる。また、面倒なために送信作業を後回しにしてしまうと情報共有が遅れ、その分現場で取り返しのつかないミスやロスコストが発生しうる。その点、Dropboxではクラウド上のファイルを編集して関係者に伝達する際、URLを転送するだけでデータのアップロードに時間がかからない。そういうリスクを摘み取った部分でも、現場にとってのメリットが大きい」と西山氏は話す。
仮オフィスへ移転するタイミングに合わせ導入
2019年10月にDropboxの導入を決定し、まず約80人が所属する建築工事統轄部を対象に先行導入した。戸田建設では、同年末に本社ビルの建て直しのためにビルの取り壊しが決まっており、新しい仮オフィスですぐ活用できるようにDropboxのSEが2人が毎日参加。支援を受けながらNASサーバーのデータをDropboxに移行させた。
新しいオフィスに移行した際に、「今までNASを使っていた一般の社員が、スムーズに仕事をしていた。それを見て、成功したと思えた」と池端氏は当時を振り返る。どこからでもファイルにアクセスできるようになり、現場からは他の協力会社に大容量ファイルを送らずに済んで便利になったという感謝の声が上がり、他の部門からも早く対応して欲しいと要望がきたという。
Dropbox環境へと移行する最中には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生。在宅勤務体制を構築するために急いでデータを移行し、5月から全社利用を開始した。移行した時期がギリギリのタイミングで、Dropboxがなければ在宅勤務メインの働き方に移行できなかったと感謝されたという。
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建設業のプロジェクト基盤に最適
すでに先行導入から1年が経つが、池端氏はDropboxの使用感を、「まるでPCに新しいOSを入れたような感覚」と表現する。Dropboxは、ストレージ機能、情報共有機能のほかにもドキュメントツールの「Paper」や共同作業に特化した「Spaces」というツールを備えているが、それらを含めたワークスペース環境を、「建設業のプロジェクトで関係者とファイルを共有しながら進めていく環境としてちょうどいい。みんなで作業状況を共有でき、ファイルを共有しながら共同編集している中で、誰がどういう作業をしているかとか、次はこういう作業をするべきだとDropboxが提案してくれる」(池端氏)と高く評価する。
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今回の移行プロジェクトの結果、NASサーバーは場所柄どうしても必要な現場以外では撤廃できたという。ただ、Dropboxの導入効果としてはそれ以上に、「元々BCP対応でと検討していたところを大きく超える形で、社員の働き方が変わってきている。それがいい意味での想定外だった」(池端氏)と語る。