コロナ禍で露呈した業務の非効率--業務ITの2021年はどっちだ?

田中好伸 (編集部)

2021-01-01 08:00

 「業務改革をITで支援」することを基本コンセプトにしているTechRepublic Japanでは、「業務をITでいかに効率化できるか」という視点でさまざまな記事を掲載している。そうした観点で2020年を振り返ると、(日本を含めた全世界的なものだが)企業の業務はコロナ禍の影響を強く受けたことが誰の目にも明らかだ。

 4月7日の緊急事態宣言以降、在宅勤務は強制的なものとなった(企業によっては4月7日以前から自主的に在宅勤務に切り替えている)。そこで見えてきたのが、これまでの業務の進め方が非効率的なものだったということだ。

紙ベースのハンコリレーの弊害

 象徴的なのが、紙をベースにしたワークフローだ。緊急事態の状況にもかかわらず、紙にハンコを押すためにわざわざ出社せざるを得なかったという話はよく聞こえてきただろう。

 (「ハンコリレー」とも言われる)紙をベースにしたワークフローは、「必要な役職者がハンコを押していない」「関係者が出張中でまだ押していない」などの課題が指摘されていた。そのために「進捗状況がわからない」といったことも指摘されていた。

 紙をベースにしたワークフローをデジタル化すれば、こうした課題は解消できるはずだ。スマートフォンに対応したものであれば、移動中にPCを立ち上げることなく、閲覧して「確認」の意思を示せる。

 ワークフロー専用のソフトウェアを購入してデジタル化できるが、大和ハウスや日本特殊陶業のように、IT部門やIT担当者が介入することなく、現場自らワークフローを構築することもできるようになっている。

普及が進む電子契約

 紙とハンコという視点で大きな問題となっているのが、取引先との契約書の類だ。これもやはり、緊急事態という人の外出をできるだけ減らさなければならない状況では無視できるものではない。紙をベースにした契約書もワークフローの課題と同じく、非効率であり、解決できるものとして注目されているのが“電子契約”の仕組みだ。

 SB C&Sのように電子契約はコロナ禍以前から導入する動きがあったが、コロナ禍以後、その動きは加速している。ただ、契約書の類は、取引先や顧客との関係性もあるため、社内のワークフローと同じように進めることができないという問題がある。しかし、企業と企業の間で業務プロセスの迅速化を図るというメリットを根強く説得していけば、「絶対にできない」ということはないはずだ。

社会のデジタル化がどこまで進むか

 企業の外部との関係性で言えば、自治体や税務署、監査法人などのやり取りもデジタル化できれば、全体的な業務プロセスを迅速化できる。企業の経費精算に必要な領収書は、スマートフォンで撮影したものでも認められるようになっており、こうした取り組みがほかの分野でも進められれば、業務のデジタル化はより一層進むことになる。

 社内のワークフローであれば、企業自体の努力でデジタル化できるが、外部とのやり取りがアナログであるために、デジタル化が進まなかったという指摘もある。

 2001年に政府内にIT戦略本部が設置され、本来であれば、行政手続きのデジタル化はかなり進展しているはずだった。一部の行政手続きはデジタル化されているが、実際にはほとんど進んでいなかったと表現せざるを得ない。2021年にデジタル庁が設置される予定となっており、行政手続きがデジタル化されることで、民間のやり取りもデジタル化が進むものとして期待されている。

 業務のデジタル化として今後期待されるのが“電子インボイス”の動きだ。2023年10月1日から複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入されることが決まっており、適格請求書発行事業者は、紙の適格請求書の代わりに電子インボイスを提供できるというものだ。

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