ニチレイロジや日清食品、清水建設などがRPAで業務の効率化を進めているが、RPAの普及で注目できるのが、光学文字認識(OCR)だ。RPAはデジタル化された情報を処理する際に活用することになるが、アナログの情報をデジタル化するために活用されるのがOCRだ。
従来のOCRは、形が決まった固定帳票にある文字を読み取れるようになっているが、形が決まっていない帳票や人間が手で書いた文字の読み取りは精度が上がらず、実業務での本格的な採用には至っていなかった。
しかし、機械学習を応用した人工知能(AI)を組み込んだ「AI OCR」が実業務で活用されるようになっている。実際、住友倉庫やFABRIC TOKYOがすでに活用している。人間が書いた手書き文字というアナログな情報のデジタル化のスピードを高めることでRPAの適用範囲はより広がることが期待される。
RPAをどの業務に適用するかは、会社ごとのポリシーや業務の進め方によって一概に決めることはできない。業務によっては、RPAを適用するよりも、業務プロセスを見直して業務の多くの部分をシステム化した方が企業全体としての最適化を図ることができるケースもあるからだ。業務プロセスを見直すまでには至らなくても、SB C&Sのようにシステム同士でデータを連携させた方が効果を得られる場合もある。
強制的な在宅勤務から新しい流れ
コロナ禍の影響で強制的な在宅勤務となったが、現在のテレワーク/リモートワークの仕組みが業務の現場で働く人々に完全にフィットしているものかどうかという点で考えると、ニーズに対応し切れていないというのが現実だろう。テレワーク/リモートワークに対しては「総論賛成でも各論反対」といったところだろうか。世代の違いによる仕事観の違い、部下と管理職の意識の違い、ITに対する意識の違いなどが混在しているためだ。
テレワーク/リモートワークについては、4月の緊急事態宣言で突貫工事でこしらえたものであるために、全体最適化が図られていないという問題も横たわる。
「ノートPCは会社から支給されたが、ネットワークが遅くて仕事にならない」「従業員個人所有のPCから業務システムにアクセスしている」「PCのセキュリティを従業員任せにしている」などの課題が意識されるようになっている。こうした事態が影響しているのか、テレワーク/リモートワークを狙ったサイバー犯罪も起こっている。
テレワーク/リモートワークへの不満の一つとして挙げられるのが、対面を前提とした、これまでのコミュニケーションができないという意識だ。チャットやクラウドストレージ、ウェブ会議を活用すれば、業務上の意思の疎通には問題がない。
しかし、従来のようにオフィスで顔を見ながらのコミュニケーション、業務とは直接的な関係がない雑談ができないためにオフィスに行きたがるビジネスパーソンがいるというのも理解できないことではない。オフィスでの雑談は、いつの間にか始まっていつの間にか終わるというシームレスなものだ。このシームレスな雑談をオンラインで実現しようと挑戦していると捉えられるのが“仮想オフィス”だ。
仮想オフィスはウェブ会議やチャットにないものを補完できるものとして期待されているが、誕生してまだ日が浅いために、利用する際のイメージがつかみにくい。今後に期待したい。
テレワーク/リモートワークは1年前には考えられないほど、日本社会に受け入れられつつある。企業の内部はもちろん、外部とのやり取りでもテレワーク/リモートワークで活用されるITが使われている。
ウェブ会議を前提にした人材採用はすでに始まっており、営業部門の顧客とのやり取りでもウェブ会議などITを活用している。また、外部の企業との日常的なコラボレーションにチャットを活用している企業も存在する。テレワーク/リモートワークで活用されるITをベースにした“非対面”な仕組みはすでに始まっており、この流れが今後拡大することが容易に想像できる。