契約というのは今までスピードが上がっていなかったと思います。契約にはAプロセス、Bプロセス、Cプロセスというようにさまざまなプロセスがありますが、それらが足し算になっています。しかも、渋滞が発生するので、さらに時間がかかるようになっています。そのため、ハンコだけが電子化されてもプロセスの足し算が解消されることはないと思います。
つまり、これは、法務部や営業部での契約作業だけを切り取って「営業部では契約に10分かかっている」というレベルの話ではないので、「全社的な事業スピードの問題なんだ」という全社的なコミットがあれば一番良いかなと思います。ただ、そこまでは難しいので、せめて「この部署が主導してやるんだ」「自分たちが主導してやるんだ」という、部署コミットのようなものがあればと思います。
準備といっても、多分、事前準備というのは必要ないと思います。当社のシステムに限らず、どこの会社も一定の契約業務に馴染むシステムになっているので、結局は、やり切る側の問題という部分も大きいのかなと思います。
――実際に導入作業に入った場合、従来の紙ベースとの違いをどのように吸収や変更すれば良いのでしょうか。
無理に変更する必要はないと思っています。いきなり全部を一からリセットするよりは、変えるべきところを少しずつ変えるのでも良いと思います。「紙の方が馴染みやすい」「Wordファイルで作成した方が馴染みやすい」というのであれば、そのまま踏襲しても良いのではと思います。
あまり堅苦しく考える必要はないと思います。当社のシステムとかもそうですが、既存のオペレーションにできるだけ馴染むような設計や柔軟性を持たせた設計になっているので、堅苦しく考えることは特に必要ないかと思います。
――紙の契約書すべてを電子化する必要はないということでしょうか。
そう思います。契約は、相手もあることなので。契約の種類とかも、契約ということで一括りにしてしまうと、それぞれ解釈が変わってきてしまうので。契約の種類も多数ありますし、相手方によっても全然違うでしょうし、いきなり全部というのは難しいと思います。
なので、これからも紙の契約というのもなくならないと思います。電子契約を導入した企業でも、紙と電子の契約書が並存するような形になると思います。
――電子契約導入後のプロセスはどのような設計にすべきなのでしょうか。
当社でもその辺りは結構模索していまして、正解がないというが結論の1つです。ただ、我々の中で今強く持っている仮説としては、次のようになります。
まずは過去の契約書とかも含めて一定数をHolmes上で取り込んだ上で、まずは契約のデータベースを作ります。つまり、システム上に契約書があるという状態を作ります。
その次に、未来に生まれる契約書のためのプロセスを設計します。たとえば、「相手からドラフトをもらった場合はこう」「法務部に法律相談する場合はこう」というようにします。そうすることで、属人的に相談を受けて回答していたのが、相談内容がナレッジとして貯まる、というようになります。このように個々の契約業務でプロセスを構築していくというイメージです。
やはり、システムなので、いろいろな人に使ってもらう必要があります。今までやっていた内容と変わることになるので、最初は不便さを感じると思います。ただ、徐々に使ってもらえるようにするには、過去の契約書をまずは取り込むことが重要なのかなと今は思っています。
3つの領域に分かれる契約
――Holmesの場合、CLMという形で全体的な製品を考えていますね。
契約というのは3つの領域に分かれると考えています。1つ目は契約締結までの領域。2つ目は契約締結後の履行の領域。そして、3つ目は契約締結後の契約管理の領域です。契約マネジメントというのは、その3つをしっかりマネジメントしましょうということになります。
契約締結までの領域ですが、契約締結までは、さまざまなステップを踏む必要があります。それらのステップではさまざまな階層が関わるので、ミスや漏れとかがあります。また、仕組みを作りにくくなっています。仕組みを作るごとにいろいろな関係者に周知する必要があるためです。そのため、コントロールやマネジメントが効かず、属人的にバラバラにやられがちです。
もちろん、契約というのはさまざまな類型でパターンがあるので、プロセスから外れる物もあります。しかし、プロセスに載せられるものは載せることで、属人的なものを排除できます。そうすることでミスや漏れがなくなり、データが貯まることで改善が生まれます。これにより、システムがさらに良くなっていきます。