契約管理についてですが、契約管理も3つに分けることができると思います。まずは、文書管理です。契約書がちゃんと保存されているという状態を作り出します。契約管理といった場合、文書管理を指すことが多いです。
次が契約ステータス管理です。契約自体には変更や更新、終了といったステータスがあります。文書管理のレベルでは「この契約は生きているのか、死んでいるのか」「この契約は変更されたのか、されていないのか」が分かりません。一度は締結した契約も変更されていることや終了していることがあるので、契約の状態管理をする必要があります。
最後が権利義務の管理です。たとえば、お金を払ってもらう権利は、契約書に書いてあってもお金を払ってもらってしまえば、なくなりますよね。そういう権利義務を管理していくとことになります。
このような3段階をマネジメントすることで、どこの部署も契約がどうなっているかを把握できるようになります。
これによって、ビジネスのスピードが上がっていくというのが一番大きいかなとは思っています。契約締結までのリードタイムを短くするという観点でもそうなのですが、一つひとつの意思決定や作業が円滑に進むことで渋滞が起きなくなります。
企業では1つの契約だけが動いているわけではありません。無数の契約が発生したり消滅したりしています。なので、さまざまな車が同時に走っている道路みたいなものだと思うのです。渋滞が起きてしまったら全体が止まってしまいます。
ビジネスのスピードが今はどんどん上がっているので、企業全体のスピードもどんどん上げていく必要があると思います。
――そのためのシステムが契約マネジメントだと。
そうです。契約業務は今まで道路がない状態だったと思います。道路がないのに契約という車が行き来していたという感じです。どっちの方向に行って良いのかも分からない。もちろん一定のプロセスはあったと思います。「承認の時にはこういうルートを辿って」とか「稟議はこのシステムに上げて」とか。ですが、それが契約の作成とかとあまり紐づいていなかったり、一応にルールはあるけど属人的に運用されていたと思います。
なので、そこに道路を作っていくのがマネジメントしていくことになると思います。マネジメントは、日本語では「管理」と訳されることが多いですが、ただ管理するだけでなく、円滑に動かしていくことも役割の1つなのかなと。それも道路の働きに似ていると思います。道路を作っても逆走する人とかいますけど、それは誤差みたいなもので、ほとんどがしっかり流れていくじゃないですか。さらに言えば、渋滞が起きるポイントを特定できるようになるし、特定したら改善のための動きをすることできます。そのような日々の流れを作っていくのがマネジメントなのかなと思います。
リモート環境下では渋滞が起きやすいと思っています。コミュニケーションの絶対時間が対面の場合と比べて単純に減るので。気軽に「あの契約どうなった」「○○さん、承認してくれましたか」という確認が取りにくくなるので、渋滞がより起きやすくなります。なので、リモートを目指す企業こそ、道路、つまり、マネジメントが必要だと思います。
――企業にとっては、単純にハンコをなくすだけではなくて、システムを作って渋滞をなくすことが大事ということですね。
そうですね。先日も当社の出資者の会合があったのですが、ハンコだけで契約の課題が解決されるとは誰も思っていないんですよね。「アフターコロナ」とか言われていますけど、「アフターハンコ」の時代も当然あって、そちらの方がむしろ本命ではないかと思います。ハンコというのはシンボリックだし、敵としてわかりやすいので、悪者っぽくなっていますけど。
たとえば、アメリカはサイン文化ですが、DocuSignのような企業がコロナを機に株価を4倍ぐらい上げています。では、なぜ、こんなにCLM製品が登場し、ユニコーン企業が出現しているかというと、それはハンコだからということではないですよね。世界を見てもハンコ文化がある国は日本を含めて一部ですから。契約のシステムがなぜ世界中で出てきているかを考えた時、ハンコが問題の根元では全然ないです。
なので、契約のプロセスと本当に向き合うアフターハンコの時代が絶対来ると思います。リモートによって、契約のプロセスをしっかり作ることの重要性がより増していると思うので。
契約業務というのは、リレーです。もちろん代表だけが契約手続きをやるような中小企業だと話は別ですが、ほとんどの企業では、誰かと誰かのリレーにとなっています。リモートになったら情報のバトンは、より渡しにくいじゃないですか。なので、リモート時代の方が契約プロセスがより重要になってくると思います。