松岡功の「今週の明言」

KPMGコンサルティングの調査で明らかになった「コロナ危機が押し進める経営改革」

松岡功

2020-12-25 11:32

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、KPMGコンサルティング テクノロジー・トランスフォーメーション・グループ統括 執行役員パートナーの浜田浩之氏と、日本オラクル 執行役員オラクル・デジタル担当の本多充氏の発言を紹介する。

「コロナ危機で事業部門とIT部門の関係が深まった」
(KPMGコンサルティング テクノロジー・トランスフォーメーション・グループ統括 執行役員パートナーの浜田浩之氏)

KPMGコンサルティング テクノロジー・トランスフォーメーション・グループ統括 執行役員パートナーの浜田浩之氏
KPMGコンサルティング テクノロジー・トランスフォーメーション・グループ統括 執行役員パートナーの浜田浩之氏

 KPMGコンサルティングが先頃、日本を含む世界83カ国4219人のCIO(最高情報責任者)やテクノロジーリーダーを対象に実施した意識調査「Harvey Nash/KPMG 2020年度CIO調査」の日本語版を公開し、概要について記者説明会を開いた。浜田氏の冒頭の発言はその会見で、新型コロナウイルス感染拡大の危機によって、多くの企業で事業部門とIT部門の関係が深まったことを示す調査結果が明らかになったことを述べたものである。

 今回の調査では、新型コロナに対処するためにIT予算の5%程度が追加支出され、55%のCIOおよびテクノロジーリーダーの予算が拡大したことが分かった。

 また、22回目を迎える2020年度の調査は、新型コロナの影響も反映させるため、2019年12月〜2020年3月と、2020年5〜8月の2回にわたって実施した。その結果、サイバーセキュリティのニーズが高まっていることも明らかになった。

 その背景には、リモートワーカーを狙ったサイバー攻撃を受ける間口が急激な広がりを見せたことで、4割以上の回答者が新たなサイバーインシデントを経験していることが挙げられる。

 同調査の内容については発表資料および調査報告書を参照していただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。

 図1に示したグラフは、コロナ危機が企業におけるIT部門の役割や働き方にどのような影響をもたらしたかを示したものである。この図における言葉遣いで、ビジネスチームは「事業部門」、テクノロジーチームは「IT部門」、テクノロジーリーダーは「ITリーダー」と置き換えていただきたい。浜田氏も説明ではそう表現していた。

図1:コロナ危機が企業におけるIT部門の役割や働き方にどのような影響をもたらしたか(出典:KPMGコンサルティング「Harvey Nash/KPMG 2020年度CIO調査」)
図1:コロナ危機が企業におけるIT部門の役割や働き方にどのような影響をもたらしたか(出典:KPMGコンサルティング「Harvey Nash/KPMG 2020年度CIO調査」)

 筆者が注目したのは、グラフの一番上で、「事業部門とIT部門のコラボレーションが強化された」という設問に対し、回答者の70%が「そう思う」と答えていることだ。

 これは果たして、リモートワークなどのIT環境に関するやりとりのレベルなのか、もしくは事業部門がビジネスを推進する上で、もっと深いレベルでIT部門とのコラボレーションが行われたのか。それを確かめるべく、会見の質疑応答で聞いたところ、浜田氏は次のように答えた。

 「コラボレーションの強化という言葉を使っているので、リモートワークをめぐるやりとりだけでなく、ビジネスの推進に関わる話まで深いコミュニケーションが増えた結果だと受け止めている」

 コロナ危機で事業部門とIT部門の関係が本当に深まったとしたら、コロナがまさしく多くの企業の経営改革を押し進めているといえそうだ。

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