最高情報責任者(CIO)にとって、2021年はデジタルトランスフォーメーションがさらに求められる年となるだろう。
2020年にクラウドへの移行が急速に進んだことで、多くの企業が、デジタルシステムやデジタルサービスで新たな成長機会やビジネスモデルをどう生み出すかを模索しようとしている。
人材紹介会社のHarvey Nashとコンサルティング企業のKPMGが実施した調査によれば、CIOの10人に6人(61%)は、コロナ禍によってIT系役員の影響力が増したと回答している。問題は、CIOが新たに得た影響力で何をするのか、またその影響力を維持できるのかということだろう。
Harvey NashでCIO紹介事業の責任者を務めているLily Haake氏は、2020年にCIOの影響力が強まったことは、前回の世界的な大不況である2008年に、企業の取締役会がテクノロジーに対して示した態度とは対照的だと述べている。当時、CIOの影響力は低下した。
Harvey NashとKPMGの調査によれば、2020年にIT担当役員の価値が上昇したのは、CIOがネットワークやITインフラを提供するという従来の役割を果たしたことによるものだという。
「CIOに対する認識が不可逆的に変わったことを示す証拠は確かにある」とHaake氏は話す。
とはいえ、CIOがその影響力を維持するためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)を今後も推進すべきであることを説明する説得力のある物語が必要だという。
Haake氏は、CIOが成功するには順応性と協調性が必要だと述べている。非IT系の役員がIT調達を行う例が増えているため、IT担当役員は今後あらゆる事業部門とコミュニケーションを取る必要がある。
「テクノロジーのオーナーシップは、今までよりはるかに分散化している。最高マーケティング責任者(CMO)、最高経営責任者(CEO)、マネージングディレクター(MD)などにオーナーシップが分散している場合もあるため、CIOが技術戦略を成功に導くためには、それらすべての関係者に影響を及ぼす能力を持つ必要がある」(Haake氏)
全英ゴルフ協会(R&A)の最高技術責任者(CTO)Steve Otto氏は、現代のデジタル化に関するリーダーシップには協調を必要とする性質があると話す。同氏は、近年のテクノロジーに関するリーダーシップの変化を振り返って、成功しているCIOは、ITのためにITを推進するようなタイプではなく、ビジネスのゼネラリストのようになっていると話す。
「次世代のITリーダーはテクノロジーだけではだめで、業務の変化を扱い、利害関係者、事業部門との関係構築を行う必要がある。私は、現代のITリーダーが成功するためには、熱意を持ち、コミュニケーションを重視するゼネラリストになる必要があると考えている」(Otto氏)
Otto氏には、2004年にR&Aに転職する以前に、米航空宇宙局(NASA)のラングレー研究所で働いていた経験や、英国のバーミンガム大学の上級講師をしていた経歴を持つ。Otto氏が持つ幅広いビジネス経験はIT部門の運営に役立っており、次世代のITリーダーには、同様の幅広いスキルが必要になるという。